2013/04/11

マイケル・ウィンターボトム監督作 『Everyday』

あまりに久しぶりの更新になるが、今回の記事は
マイケル・ウィンターボトム監督作"Everyday" の英国版予告編を紹介。


出演は『ひかりのまち』にも登場しているジョン・シム、シャーリー・ヘンダーソン。
そして、音楽も『ひかりのまち』同様にマイケル・ナイマン(かの『ピアノ・レッスン』の音楽を手がけたことでも知られており、映画音楽界における、その功績は言わずもがな。)が担当している。

本作は、映画の完成まで、「ある家族の5年間」というストーリーと同じ5年の歳月をかけたという。日本公開が楽しみな一本。

2010/01/29

『未来を写した子どもたち』

「未来を写した子どもたち」を観た。2005年、第77回のアカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した作品で、ロス・カウフマン監督の監督作。

このようなドキュメンタリーがこのように映画化できたことのみならず、アカデミー賞といった大きな賞を受賞したことで、少しでも多くの国で上映されるきっかけになったかと思うと、とても嬉しく思う。
日本での上映に約5年もかかってしまったのは残念だけれど・・・。


この映画は売春窟に暮らす子供たちとそこを訪れた写真家のザナ・ブリスキの活動を収めたドキュメンタリー。
インド・カルカッタの売春窟に生まれついた子供たち。一定の年になればほとんどの女の子は売春婦になる運命にある。
この街を訪れ、子供たちのほとんどが夢や希望を持つことも許されないような悲惨な境遇であることを知ったザナは子供たちを救い出したいという想いから、写真教室を開き、子供たちに写真を教える。さらに、その子供たちが学校でちゃんとした教育が受けられるよう、奔走するのだ。


映画の中で、自分たちの運命を知る子供たちが発する言葉は胸に痛いものだった。
まだまだ純真無垢であろう年頃の子供たちが、自分たちが置かれている家庭環境やこの街で育つことの悲しい運命を、彼ら・彼女らなりに冷静に捉えていることの衝撃。
彼らはそんな境遇でもその生活の中にわずかな希望を見出し、逞しく生きている。

この映画に登場する子供たちの中でも類稀な才能を見出された少年・アヴィジット。彼の作品はその構図や視点も写真を教わったばかりの子供とは思えないほど、独特で素晴らしい。
そして彼はアムステルダムで開かれるこども写真展にインド代表として招待されることとなった。
一度は写真から離れかけた彼が、アムステルダムの街をいきいきとした表情で歩く姿が実に印象的だった。

これからDVDでこの作品を観る人は、ぜひ特典映像にあるインタビューを観て欲しい。来日時の監督とアヴィジットのインタビューだ。
アヴィジットは、この映画ののちに映画の作り手になることを目標に、ザナの活動で集まった資金でアメリカの高校に行くことができた。そしてニューヨークの大学にも進学することとなる。
ザナの取り組みや写真との出会いが彼の運命を変えたように、自分が作った映画をきっかけに誰かの人生が変わるかもしれない。それを願って目を輝かせる彼の表情は、この映画にさらに光を与えてくれた気がする。
その一方で、彼から語られた話には、どうにもできない現実と悲しみもあった。

ザナ・ブリスキは子供支援基金「KIDS WITH CAMERAS」を設立している。
ザナ達の取り組みは、映画の中に登場した、ごく一部の子供たちだけに影響を与えたのではなく、その後もその活動の影響が大きく広がっている。

こうした意義のある映画こそ、ぜひ多くの人に観て欲しい。

(C)Red Light Films, Inc.2004

2009/06/30

「スティル・アライブ」から

先日の日記でも紹介した「キェシロフスキ・プリズム」、行ってきました。

楽しみにしていた「スティル・アライブ」。

キェシロフスキ監督が語る言葉も、周囲の人が語る言葉も興味深い言葉はたくさんありましたが、
印象的だったのはベネツィア映画祭で金獅子賞を取り、たくさんのカメラマンたちに囲まれ、
カメラの前で笑顔をつくる監督のエピソードでした。


キェシロフスキ監督はその後、賞を取ったにもかかわらず、いたく落ち込んでいたといいます。
一躍世界的な脚光を浴びたことが、望んでもいなかったかのように。

キェシロフスキ監督にとっては、
名声、名誉など全く必要としないどころか、逆に邪魔なものだったのかもしれません。


人の心の真実を捉え、そこに光をあてる。
ただ、ひたすらそのことにしか興味がなかったのだろうか、
そんなことを考えながら映画館を後にしたのでした。

2009/05/15

特集上映「キェシロフスキ・プリズム」 オススメです!! 

個人的には大興奮の上映企画が始まります。
ポーランド映画界の至宝とも言われる、巨匠・クシシュトフ・キェシロフスキ監督の作品群とキェシロフスキの映画作りに関するドキュメンタリー映画『スティル・アライヴ』など全29作品を一挙に上映してしまうという、拝んでしまうような素晴らしさ。
「キェシロフスキ・プリズム」が6/20より渋谷のユーロスペースで上映開始、約1ヶ月にわたり続きます。

中でもドキュメンタリー映画『スティル・アライヴ』 は初期のドキュメンタリー製作から、ドキュメンタリーとドラマの混在、ドラマへの移行に至るまでがキェシロフスキ監督自身の声やスタッフ、主演女優、友人などの証言を交え、観られるそう。
 「内部に深く入り込んで現実をとらえたい。」
キェシロフスキ監督はいつもこう語っていたといいます。
特に人間の感情・真実に迫ろうとしたキェシロフスキ監督。その眼差しを感じる面白さが映画の強力な引力なのかもしれません。

この非常に貴重な機会を逃さず、ぜひ「キェシロフスキ体験」をしてみてください。
現時点で日本未公開の5作品(権利の関係でDVD化にもならない作品とのこと)も公開されるそう。
この映画通.comでも紹介した「デカローグ」も、もちろん上映されます。


期間中の1ヶ月、週末はキェシロフスキ三昧で大忙しになりそうです。

2009/04/30

カンヌ映画祭、今年のコンペティション部門は・・・

カンヌ映画祭のコンペティション部門のラインナップが発表されましたね。

今年はまたいつにも増して巨匠ぞろい!!のラインナップなのですよ。
20作品のうち、パルムドールの受賞経験がある監督が4人! 
ケン・ローチ監督、ラース・フォン・トリアー監督、ジェーン・カンピオン監督、クエンティン・タランティーノ監督!
そのほかも監督陣は豪華豪華。
ラインナップの一部を紹介しますと・・・

“Bright Star” ジェーン・カンピオン監督
“The White Ribbon”  ミヒャエル・ハネケ監督
“Broken Embraces” ペドロ・アルモドバル監督
“Map of the Sounds of Tokyo” イザベル・コイシェ監督 ※この作品は菊池凛子さんが主演!
“Looking for Eric”  ケン・ローチ監督
“Inglourious Basterds”  クエンティン・タランティーノ監督
“Taking Woodstock”  アン・リー監督

カンヌ映画祭って改めて贅沢な映画祭だなあ、としみじみ。

ちなみに今回のケン・ローチ監督の監督作品は
熱狂的なサッカー・ファンの郵便配達局員が主人公。人生の危機に直面して、エリック・カントナから精神的な指針を得ようとするコメディー・・・という感じのお話のよう。

日本公開、、、、される日を楽しみに、
そしてカンヌ映画祭のコンペ部門の結果の行方も楽しみに、
待つとしましょう。

2009/04/20

恐るべし!な兄弟監督といえば・・・

兄弟監督といえば、まず皆さん名が浮かぶのはコーエン兄弟でしょうか。
日本でも世界でも幅広い層のファンがいて、
作品もひとひねりもふたひねりもあって面白い。
カンヌ映画祭も常連、兄弟監督のアメリカ代表選手。

ヨーロッパ代表選手といえば、
日本ではコーエン兄弟ほど有名ではないですが、
ベルギーのダルデンヌ兄弟。
こちらもかなり「凄い」兄弟監督ですね。

カンヌ映画祭は同じく常連。
もう常連というだけでなく、なんと4作連続の主要賞受賞という快挙を成し遂げている
凄い兄弟なんです。
そして、史上5組目になる2度のパルムドール大賞まで受賞しています。
※受賞作品は 「ロゼッタ」と「ある子供」

ちなみに、ダルデンヌ兄弟の2作目、92年の「あなたを想う」という作品では、
会社側の圧力によって妥協の連続だったそう。
ふたりには“全く”満足できない作品となってしまったそうです。
映画として世に出るものが意に反して全く満足できない作品となるとは
なんとも耐え難い話ですね。
そして、その失敗に懲りた二人は、次作「イゴールの約束」では
決して妥協しない環境で映画を製作したそうです。

その妥協の無さは「息子のまなざし」からもまざまざと観せつけられた感があり、非常に衝撃を受けました。
その時、私の記憶の中にガツンとその名を刻んだダルデンヌ兄弟。
(お兄さんはジャン=ピエール・ダルデンヌ、弟はリュック・ダルデンヌ)

二人の最新作は

2008年にカンヌ映画祭で4作目の主要賞になる脚本賞を受賞した「ロルナの祈り」。
上映終了した地域も多いですが、
まだまだこれから映画館で上映する地域もあります。

21世紀を代表する・・とも言われるダルデンヌ兄弟の監督作品を
未だ観たことのない方は一度ぜひ。
私も映画館で観ることができなかったので、
DVDになるのが楽しみな作品のひとつ。

公式HP

2009/01/26

ビクトル・エリセ監督の二作品が上映中!

スペイン出身の世界的映画監督、ビクトル・エリセ。
世に出す映画がほぼ10年に1本ということもあってか、「寡作な映像作家」などと呼ばれたりしています。
このブログ、映画通.comでも2度ほど登場しています。

“映画はこの世界に存在する全てのものを照らし出し、
私たちの目の前で繰り返し「命」を与えてくれるの です。”
という
「10ミニッツオールダー(人生のメビウス)」公開時の監督のコメントに感銘し、
映画「ミツバチのささやき」を観て、監督の才能にまた衝撃を受けたものです。


完璧な映像美の連続で魅せる
そのビクトル・エリセ監督の映画二本が、1/24~2/13 渋谷ユーロスペースにてニュープリント上映されるのです。
作品は先述の
「ミツバチのささやき」

「エル・スール」


こんな貴重な機会はなかなかありませんから、
ビクトル・エリセ監督ファンはもちろん、
監督の作品未見の方も、この機会に映画館で観てはどうでしょうか。
ビクトル・エリセ監督の映画は「映画館で観るべき」でございますよ。