2008/12/31

注目映画:『PARIS』

今日は年末から公開している注目作品をご紹介。
『猫が行方不明』や『スパニッシュ・アパートメント』などフランスを代表する監督とも呼ばれるセドリック・クラピッシュ監督の最新作、『PARIS』です。

この作品はフランスで170万人が観たという大ヒット作品!

主演はロマン・デュリスジュリエット・ビノシュ


主人公ピエールは心臓病で余命わずかと宣告されます。助かるためには心臓移植しかなく、その手術の成功率は40%。彼は移植の提供者を待つ静かな日々を過ごす事にするのです。
そこへ弟を心配したシングルマザーの姉・エリーズがやってきて、同居生活が始まるのでした。

死を意識し、人生に残された時間を感じるようになったピエール。彼の目から見えるパリの街で生きる人々の日常が、貴重で美しいものとして意味を持ち始めます。
それぞれの人のありふれた些細な時間も、哀しみも、喜びの笑顔も、何にも変え難い大事なもの。そしてその人々や彼らを包みこむ「パリ」という街もとても愛おしいものだと気づいていく、といったストーリー。



日常の物悲しさも、切なさも、些細な幸せも、溢れ出るほどの喜びも、
何かを愛おしむ気持ちも、
生きているからこそ味わえる貴重なもの。
それは様々な形で日頃から私達に伝えられていることだし、理解しているつもりであっても、
残された自分の生命の時間を意識した者と、そうでない者では
絶対に見えるものも感じるものも違うはず。

ピエールの目を通して観る、生きていることそのものの愛おしさ
を、映画館で少しでも感じとって来ようと思います。

12/20からBunkamuraル・シネマにて公開。順次全国公開予定です。

(C)CE QUI ME MEUT - STUDIO CANAL- STUDIO CANAL IMAGE -- FRANCE2 CINEMA

2008/12/04

「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」いよいよ公開!

ザ・ローリング・ストーンズのライブドキュメンタリー映画が公開。しかも監督はあのマーティン・スコセッシ監督。

それだけで、もう何も宣伝文句なんていらないんじゃないでしょうか。

「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」がいよいよ12月5日から公開します。
音楽と映画の世界でその時代を猛烈に走り続け、私達を興奮させたストーンズとスコッセッシ監督。その気迫のぶつかりあう様子がスクリーンから感じられるのだから。。。。
百聞は一見にしかず、これは観に行くしかないでしょう。

映画は 2006年の秋にニューヨークのライブハウスの殿堂ともいわれるビーコン・シアターで行われたライブの模様が収められています。
そしてミック・ジャガーとマーティン・スコセッシ監督の“本気のせめぎ合い”が収録されているとか・・・。

大きなスタジアムのライブを収めるのではなく、
親密度がより伝わる小さなライブ会場での撮影にこだわったスコセッシ監督。結果、収容人数2800人ほどのビーコン・シアターでのライブを撮影することが決まったそう。

早く観に行かなくては!!

(C)2007 by PARAMOUNT CLASSICS, a Division of PARAMOUNT PICTURES, SHINE A LIGHT, LLC and GRAND ENTERTAINMENT (ROW) LLC. All rights reserved.

公式HP

2008/11/27

JUNO

アメリカでは公開当初7館だけの公開だったのが、
あれよあれよと上映館が2400館以上を越える大ヒット。
アカデミー脚本賞まで受賞した本作。
なかなかの良作でした。

興味本位で同級生のポリーとセックスしてしまった16歳のジュノ。そして、なんと予想外の妊娠!はじめは産む気もなく、
中絶を決めていたジュノだったが、同級生の「爪だってもう生えてるわよ」の一言に産むことを決意。
そして、早速里親になる夫婦を探しはじめるのだった・・・。


個人的にはエレン・ペイジの演技が素晴らしかった!と思います。
映画のタイトルにまでなった主人公・16歳の「JUNO」。
JUNOがこれほどまでいきいきと映らなければ、映画の大成功はここまでに至らなかったんじゃないか、
と勝手に推測してしまうほど。

それほどにスクリーンの中のジュノは、まだあどけない少女の部分、傷つきやすさを持ち合わせながらも、あくまで“ジュノはジュノ”であることを貫いていて、すごく輝いて見えていたのでした。

物語に流れる、周囲の愛情や温かさもさることながら、
ジュノがあくまで正直であること、あるがままの自分をしっかりと認めていられることに元気をもらった人は多かったんじゃないでしょうか。

あるがままの自分を愛してくれる人が一番かけがえのない存在だということ。もちろん友達であれ、恋人であれ、家族であれ。
そして自分もそのあるがままの自分を愛すること。
それはみながおそらく心の中で求めていること。
そんな普遍的なメッセージを、笑ったり泣いたりしながら感じとれる映画だったからこそ、多くの人の心に届いたのだと思います。ほっこりと心温めてくれるキュートな作品です。

(c)2007 Twentieth Century Fox

公式HP

評価:★★★.5

2008/11/20

地上30センチの勇者達?!

地上30センチの勇者達って?!

誰かと思いきや、その勇者達とは「ミーアキャット」!!
なんともキュートな彼(彼女)らがスポットライトを浴びてしまいました!

その映画の名もそのまま「ミーアキャット」。

あの「ディープ・ブルー」や「アース」を撮ったBBCの製作陣営がアフリカ・カリハラ砂漠で危険と隣り合わせで生きるミーアキャットの家族の物語を追っています。

最新の撮影技術を駆使され、ミーアキャットの巣穴の中の撮影にまで成功したそうで、
日々のスタッフの熱意によって貴重な瞬間を捉えた映像を目にすることができそうです。
またナレーションは今年9月に惜しまれつつこの世を去ったポール・ニューマン。


ミーアキャットはその立ち姿だけでもキュートですが、予告編を観ると、その表情、振る舞いの愛らしさに顔がゆるみますよ。
これは「アース」に続いて必見の動物ドキュメンタリー映画・・・ですね。

来年2009年1月10日から公開。

Yaffle Films (Meerkats) Limited (C)2007

公式HP

2008/11/08

世界一いかした?!おじいちゃん、おばあちゃん・・『ヤング@ハート』


11/8公開の映画の中から気になる一作をご紹介。

『ヤング@ハート』

それは「世界一いかしたロックンロール・コーラス隊」、アメリカ・マサチューセッツ州に実際にあるコーラス隊「ヤング@ハート」を照らし出したドキュメンタリー映画。
なんと「ヤング@ハート」のメンバーは平均年齢80歳のおじいちゃん、おばあちゃん達で構成されていて、歌われるのはロックやR&Bの曲ばかり。

国内だけでなく、世界に飛び出し、各地で大喝采を浴びているという彼らのショー。
ジミ・ヘンドリックス、ボブ・ディラン、コールドプレイ、ジェームズ・ブラウンなどなどの様々な名曲が歌われるのです。

けれど描かれるのは、彼らのそのパワフルさや歌を愛する心だけではなさそうです。
またぜひ、映画を観た後にこのブログでお話できればと。。。

(C) 2008 Walker George Films (Young at Heart) Limited.

公式HP

2008/10/20

映画ファンに朗報!ヴィム・ヴェンダース特集開催中!

10/18(土)から・・・映画館・早稲田松竹でなんとヴィム・ヴェンダース監督特集の開催中です!!!
嬉しい!

とはいえ、この特集を知ったのは19日夜・・。貴重な一週目の土日を逃してしまいました・・・・・。ウーン。

上映される4作品は・・

『都会のアリス』(1974)
『まわり道』(1975)
『さすらい』(1976)
『アメリカの友人』(1977)

早稲田松竹HPはこちら


ヴィム・ヴェンダース監督の監督作は昔の作品で観ていない作品がまだまだたくさんありますが、
大好き映画の一つが『パリ、テキサス』
衝撃的に良かったですね。

ヴィム・ヴェンダース監督は、村上龍さんの「イン・ザ・ミソスープ」を原作
とした映画『The Miso Soup』を監督することが決まっているんですよね!
どんな作品になるのか・・・・楽しみですこと。

2008/10/11

「しあわせのかおり」が公開スタート!

以前もこのブログで紹介した「しあわせのかおり」が、10月11日ついに公開スタートしました!!

編集を担当しているインタビューWEBマガジン『PersonUp』でも
藤竜也さんのインタビューを含めた「しあわせのかおり」の特集ページをアップしました。

そこにも書いたとおり、この作品は本当に多くの人に観て欲しい作品。
できることならロングラン作品になって欲しいし、上映館がもっと増えて欲しいデス。。。
(嬉しいニュース・・・・フランスで、約40ほどの劇場での公開が決定したそう!)


ぜひぜひ、多くの人がこの映画を観て、この映画の良さを感じてくれますように・・・・。
願いを込めて・・・・・。


(c)2008「しあわせのかおり」製作委員会

2008/10/02

キアロスタミ監督の『クローズ・アップ』

友人の勧めもあり、アッバス・キアロスタミ監督の隠れた傑作?とも噂される『クローズ・アップ』を観ました。

この映画は非常に独特な作り方で、実際に起こった事件を、裁判などのドキュメンタリー部分と実際に事件に係わった当事者達の再現部分とを境界なく、構成した珍しい作品。
どこからがフィクション(といっても元は実話がですが・・・)で、どこからがノンフィクションか、観ているうちはちょっと混乱するものの、それがまた興味をそそるのですね。

主人公・サブジアンは詐欺罪で逮捕された青年。その青年は、映画への愛や様々な感情にかられ、自分を憧れの映画監督、モフセン・マフマルバフだと偽り、ある家族をだましてしまうのです。
最初は彼が思わずとっさについてしまった嘘ながら、その嘘をつき通し、家族の家で撮影をする、お金を騙し取るという話にまで発展してしまうのです・・。
そして、実際の裁判にカメラが入り、サブジアンがなぜ彼が嘘をつきとおすに至ったか、その訳があかされていくのです。

観ている私達、おそらく大方の人が彼を非難する気持ちは薄れていくでしょう。彼が告白する心に秘めていた声を聞き、痛みを知り、単なる憧れだけから来たものではない、切実なる想いが故の行動を理解するのです。
そして、彼の気持ちのどこかしらに、誰しも少なからず共感を覚える部分があるのだと思います。

終盤にはサブジアンが尊敬してやまないマフマルバフ監督が彼の出所時に出迎え、感動的対面を果たします。
その後、彼らは一緒にバイクに乗り、あるところへ向かうのです。
ここはまたノンフィクションの部分でもあり、最後の最後にサブジアンが見せる表情は、眩しい光となって映画を締めくくってくれました。

「照らし出す」ということはこういうことなのかもしれませんね。


出会えてよかったと思う素敵な映画です。
そして、映画館で観たかったな~と思う映画。笑

キアロスタミ監督自身も自身の監督作の中で一番好きな作品といい、キアロスタミ監督のファンの中でもこの作品が一番好きという人が意外と少なくないのも、納得!でした。


評価:★★★★☆(4.5)

2008/08/11

「マイ・ブルーベリー・ナイツ」その2

その1から随分日が経ってしまいましたが・・・「マイ・ブルーベリー・ナイツ」その2を。

「マイ・ブルーベリー・ナイツ」のストーリーは・・
恋人にふられたノラ・ ジョーンズ演じるエリザベスは彼が行きつけだったカフェに乗り込む。それをきっかけに、カフェのオーナー・ジェレミーと語り合いながら、彼が作る ブルーベリー・パイを食べるのが日課に。。。。
ある日、エリザベスは ニューヨークから突然姿を消して、あてのない旅を始めて・・・といったお話。

私のお気に入りのシーンは、2人がなぜかそれぞれ違う場所で、同じタイミングで鼻血を出してしまうというレアな状況の後、鼻血を抑えながらおしゃべりするシーンとジュード・ロウ演じるジェレミーが、昔別れた彼女と店の前で何年ぶりかに会い、おしゃべりするシーン。
前者はその演出の遊び心がなんとも楽しかったし、微笑ましくって。
後者はそこに漂っていた空気感というか、本来なら心地よくないだろうシチュエーションだったのが、
なぜか二人の間にはとっても心地よい距離感があって、、、何だか良かったのですね。

映画の中では、旅をしている間のエリザベスの感情は、それほど多く語られません。
それよりも長い旅の中で出会う人々が抱える哀しみ、愛情への渇望、喪失感はしっかりと描かれ、
それを見守る彼女(同じ様な気持ちで見つめる私達観客)、そんな構図です。

鮮やかで印象的な映像美、
ふとした行動の裏に込められた想い(またその表現の仕方が心ニクイ)、
それらが時にぎゅーっと切なくさせ、時にじわじわーっと温かさ体いっぱいに広がるような、
そんな良い映画でした。


それにしても、レイチェル・ワイズ・・・・・美しかったデス!!


評価:★★★★☆

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2008/06/30

「マイ・ブルーベリー・ナイツ」その1

いまさらですが、「マイ・ブルーベリー・ナイツ」
ウォン・カーウァイがアメリカを舞台にした、全編英語の作品。
しかも、その主演はあの、ノラ・ジョーンズ。初の映画デビュー・・・。

と、「どんな映画になるのかな?」的要素がいろいろでしたが、、、やっぱりウォン・カーウァイ節たっぷりで、いい意味で予想を裏切る、良作でした。

ポスターや公式サイトの表紙を飾る、このノラ・ジョーンズ演じるエリザベスとジュード・ロウ演じるジェレミーのキスシーン。
映画の中でもとっても印象的で、さすがウォン・カーウァイ監督!って感じの記憶に残るステキなキスシーン。
でも、この広告を飾るメインイメージが故、二人の恋愛模様がたっぷり・・といった映画をイメージしていた人も多いのでは?

ところが、そうでもないんです。

もちろん二人の距離感や感情の動きも、爽やかに描かれているんですが、ノラ・ジョーンズ演じるエリザベスが旅に出ている間、そこで出会う人々がこの映画にすごく良い趣を与えてくれてるんですね。
それぞれにとても興味を惹かれたし、「人間くささ」溢れる人達なのです。

・・・と今日はこの辺りで続きは次回!

(c)Block 2 PICTURES 2006

2008/06/19

「それぞれのシネマ」が8月、再び劇場公開!!

先日、興奮気味に紹介した超豪華なオムニバス映画「それぞれのシネマ」。

もちろん、先月中に観てきましたが、2週間と短い公開、、、見逃した方も多かったのでは??

そんな方に朗報!!

「それぞれのシネマ」が 8月2日から終了日未定で、渋谷ユーロスペースで公開します!!! ヤッタ!
詳細はコチラ

思わず、また観に行ってしまうかも・・・。

東京公開の後は、名古屋、大阪、札幌などで順次公開していく予定とのこと~。
朗報、朗報。

観てきた感想はまた後日!! 写真は印象的だった作品の一つ。「アナ」のワンシーン。監督はアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の作品。

DVDも7月4日に発売ですっ!
公式HP 参加監督紹介

(C) 2007 Festival de Cannes- Elzévir Films. All Rights Reserved.


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2008/06/18

ショートショート フィルムフェスティバル アワードセレモニーに潜入!

6/15、ショートショート フィルムフェスティバル&アジア2008のアワードセレモニー(授賞式)の会場に潜入?!してきました。

今年でショートショート フィルムフェスティバルも10歳。そして、ショートショート フィルムフェスティバル アジアは5歳を迎えました。
そんな記念すべき今年のフィルムフェスティバル、グランプリは同フェスティバル史上初となる日本作品が受賞しました。
「胡同(フートン)の一日」という作品で鈴木勉監督の監督作。

再開発が進み、歴史ある街並みが姿を消そうとしている"胡同"。その"胡同"の町を舞台にたくましく生きる人々の姿に心を動かされていく青年を描いた作品とのこと。

会場では豪華な審査員陣が審査の感想や受賞者の発表をしていました。
中田英寿さん、大沢たかおさん、押井守監督、宮本亜門さん、掘北真希さん、土屋アンナさん
などなど。。。

そして各部門の受賞者もインターナショナル。
賞の合間に4つのショートフィルムも上映。招待客を飽きさせないような演出。

特別賞は、
7館の上映から全米で2000館の劇場での上映にまで拡大し、全米で大ヒットを巻き起こした「JUNO/ジュノ」のジェイソン・ライトマン監督とプロデューサーのダン・ダビッキ氏が受賞。ジュノ役を演じたエレン・ペイジがお祝いコメントを寄せていましたが、面白いジョークを連発してました。
ちなみに監督も声出して笑ってました。「最近何だか歯並びが良くなったけど、何かした?」とか「ショートショート フェスティバル」に呼ばれてるそうだけど、普段から彼らはいつも、かなりのショートパンツを着ていて、やけに似合う」とか・・。

ライトマン監督は2001年にショートショート フェスティバルに作品を出品して、入賞を果たしていたそう。
長編2作目で今回の大ヒット、さらには各国映画祭での受賞、アカデミー賞での作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞など4部門ノミネート・・・とは、、、驚!です。

そんな訳で、ショートショートフィルムフェスティバル、来年にも期待しましょう!!

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2008/06/17

注目映画:ケンローチ監督最新作『この自由な世界で』

映画を観たいと思うときの動機、「ストーリーが面白そう」、「出ている俳優が好き」、「前評判がいいから」
人それぞれありますよね。
私の場合は「あの監督の監督作だから…」という動機で観に行くこともやはり多いかも。

その最たる例といえば、大好きなケン・ローチ監督。
(唯一、映画通.comの中でも監督名でカテゴリを作っていたりして。)

偶然なのか、必然?なのか、ケンローチ監督の最新作を紹介しようと思った今日は、なんとケン・ローチ監督の誕生日でした!
信じられないですが、もう今日で72歳!!!

ケン・ローチ監督はほとんどの作品がイギリスの労働者階級や移民たち、彼らの日常を描いたもの。

大作映画のような華やかさなどは微塵もなく、常に非常に近い目線で人を見つめ、人の心の機微や、どうにもならない現実のもどかしさ、絶望と希望を監督ならではの描き方で、映画にしている気がします。
「マイ・ネーム・イズ・ジョー」のコラムでも書いたことですが、「人」に対する愛情がこれほど感じられる監督は稀有だと思うのです。

そんなケン・ローチ監督の最新作『この自由な世界で』が8月、シネアミューズ他で公開予定です!!
嬉しい!!

ケン・ローチ監督と言えば・・・のポール・ラバティ氏が今回も脚本を担当、この『この自由な世界で』は2007年のベネチア国際映画祭で最優秀脚本賞も獲得しました。

舞台はロンドン。主人公のアンジーはシングル・マザー。ある日、働いていた職業紹介所をクビ になった彼女は、ルームメイト一緒に自分達の職業紹介所を立ち上げる。
ある日、不法 移民を働かせる方が儲かることを知り・・・・といったストーリーとのこと。

非常に楽しみ。ぜひ試写で一足早くみたいなあ。。。。

ぜひ、皆様過去のケンローチ監督作、DVDなどでご覧下さい!オススメです。

『この自由な世界で』公式サイト

(C) Sixteen Films Ltd, BIM Distribuzione, EMC GmbH and Tornasol

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2008/06/07

「美しすぎる母」公開スタート

以前、映画通.comでも紹介した「美しすぎる母」
今日6/7(土)よりBunkamura ル・シネマ他で全国順次ロードショーです。

優美な映像と複雑すぎる人間の感情と事実を基にした衝撃的なストーリー・・・・

photo:(c) Lace Curtain, Monfort Producciones
and Celluloid Dreams Production

オフィシャルサイト

評価:★★★★☆

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2008/06/01

注目作「イースタン・プロミス」の意外な見所・・

6月14日から公開する映画、「イースタン・プロミス」

関係者の方にお話を聞いたところ、この映画は・・
超、超、傑作!!だそう。

監督はデヴィッド・クローネンバーグ。 というだけでも映画ファンは期待してしまうところですよね。
映画そのものの面白さもそうだし、ヴィゴ・モーテンセンの演技も、ナオミ・ワッツの演技も、非常に素晴らしいそう。

そして、見所は「
ヴィゴ・モーテンセンの全裸ファイト」らしいです。笑
全裸でファイトですよ。笑

助産師のアンナ(ナオミ・ワッツ)が働く病院に、身元不明の少女が運び込 まれ、その少女は女の子を産んだ後、すぐに息を引き取ってしまう。
アンナは、孤児になってしまった赤ちゃんのために、少女の身元を探そうと、残されたロシア語による日記とその中に挟まれたロシアン・レストラン のカード。
それを頼りにレストランを訪ねると、謎めいた男ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)と出会う。彼は、ロ シアン・マフィア<法の泥棒>の運転手。 
アンナは日記によって人身売買の秘密を知ることになり、知らず知らずに危険な状況に身を置くことになってしまう・・・といったストーリー。

ヴィゴ・モーテンセンがアカデミー賞の最優秀男優賞にノミネートされたほか、各国で数々の作品賞受賞やノミネートを獲得、その数、7冠、35賞ノミネート・・・
うーん、期待大!
  (c)2007 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

公式HP
6月14日からシャンテ シネ、シネ・リーブル池袋ほか全国公開。

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2008/05/27

カンヌ映画祭閉幕!

さてさて、カンヌ映画祭が閉幕しました。
今回嬉しいニュースといえば、、、
「ある視点」部門で黒沢清監督作「トウキョウソナタ」が大賞に続く、審査員賞を受賞!
前回のコラムでも話題に出した、香川照之さん主演。

パルム・ドール(最高賞)は『ENTRE LES MURS(THE CLASS)』(ローラン・カンテ監督)。
フランスの作品がパルムドールを獲得したのは約20年ぶりとのこと。
何とも意外。

そして、これまでパルムドールを2度も獲得しているダルデンヌ兄弟は『Le Silence De Lorna (The Silence of Lorna)』で今回脚本賞を受賞。

今回のカンヌ映画祭に出品・受賞した作品の、日本での公開が待たれるばかり。

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2008/05/21

注目映画「TOKYO!」 

エターナルサンシャイン」のミシェル・ゴンドリー監督、「ポンヌフの恋人」のレオス・カラックス監督、「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督、、、、、豪華なこの3人の監督が東京を舞台に映画を撮った!

それだけでも今から楽しみな映画「TOKYO!」 
晩夏、シネマライズ他、で世界先行ロードショーの予定だそうです!

私達が当たり前のように見ている街並み、日本文化、特殊な都市、東京。

3監督がどう東京を捉えているか、非常に興味津々。

それに加えて、香川照之さんもポン・ジュノ監督の監督作品「シェイキング東京」に出演します。
香川照之さん、、本当に人を惹きつける演技をされますね。
今後ますます日本を代表する俳優として活躍されていくんでしょうね。
香川さんの出演作というのはなんだか気になります。

ちなみに、先日カンヌ映画祭で、<ある視点>部門に正式出品された本作、この部門でレッドカーペットに登場するのは特例らしいですが、
そこで流暢なフランス語の挨拶で会場を沸かせたとか。一言二言ではなく、ちゃんとした挨拶&ユーモアも入れて。 さすがですね。

今でも映画界で大活躍してますが、今後、映画界の歴史に名を残す俳優になられるでしょうね。きっと。
好きな俳優さんの一人です。

公式HP

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2008/05/13

「しあわせのかおり」

今年秋公開予定の映画「しあわせのかおり」の試写を観てきました。

いや~、良かった。
自然にすーっと感情移入するお話で、
なんでもないシーンでも涙が出てしまう。
もの凄ーーく温かい映画なんです。
藤竜也さん演じる料理人・王さんも、中谷美紀さん演じる貴子も。

舞台は石川県の港町。
王さんは「小上海飯店」を営む中国人料理人。貴子はデパートへの出店を要請しようと訪れますが、王さんに即座に断られます。しかし、貴子は諦めない。お客として店に通ううち、その料理のあまりのおいしさに、心から味わい、毎度毎度幸せそうな笑顔を見せる貴子。
ある時、王さんのお店の存続の危機を知り、貴子は一大決心をします・・・・。

藤竜也さんはこの役を演じるにあたり、約4ヶ月にも渡って料理のレッスンを受けたそうです。
中谷美紀さんも相当の期間のレッスンを受けたそう。
もちろん、映画中の料理のシーンは本人がやっているそうです。
その料理シーンも見所の一つ。

親子ほど年の離れた、元は他人同士の二人。
でもそこにはとっても真っ当で温かくて、熱い「心」がありました。

心を込めて料理を作る「心」、おいしいもので幸せを感じる「心」、料理を作り続けたいと思う「心」、
大切な人を支えたいと思う「心」、家族を思う「心」
真の「心」ばかりがこの「しあわせのかおり」の中には溢れていて、
涙が自然とこぼれてしまうんです。

たくさんの人に観て欲しいと心から思った映画です。
こういう映画の感動や温もりこそ、多くの人に味わって欲しい。
心のこめられた料理(映画)というのは、本当に人の心を幸せにするものですね。

(c)2008「しあわせのかおり」製作委員会


公式HP

藤竜也さんロングインタビュー「パーソンアップ」

評価:★★★★☆(4.5)

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2008/05/08

見逃せない! 「それぞれのシネマ」

いささか興奮気味にご紹介します!!!
楽しみでしょうがありません。
見逃せません。

その映画は
「それぞれのシネマ」

昨年カンヌ映画祭60回を記念して、世界の巨匠が集いに集い、33人!
その錚々たる巨匠監督達が「映画館」あるいは「映画」をテーマに、映画への愛を込めて3分の短編映画を作りました。
日本からは北野武監督も参加した、ヒジョーに贅沢・・・なこの映画、

なんと、劇場で5月17~30日まで、ユナイテッド・シネマ豊洲で限定公開です!!

ああ、なんて贅沢なの!という顔ぶれをちょっと紹介しますと、
ジェーン・カンピオン  チェン・カイコー  ヴィム・ベンダース  ガス・ヴァンサント  ウォン・カーウァイ  アキ・カリウスマキ  アッパス・キアロスタミ  アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトウ  チャン・イーモウ  ラース・フォントリアー  ウォルター・サレス  ロマン・ポランスキー  ナンニ・モレッティ  デヴィッド・クローネンバーグ  デヴィッド・リンチ(カンヌ映画祭では参加しなかったらしいですが)  ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟  北野武  ケン・ローチ  などなど・・・・

どうですか??
ちょっと興奮するのもわかる顔ぶれですよね?!
今回残念ながらコーエン兄弟の監督作はカットになるそうです。

本当に見逃せません。
7月4日にはDVD発売するそうですが、
 スクリーンでこの映画を観逃してはならぬ~!
 待ちきれない!!
という勢いで楽しみにしてます。

映画ファンは必見ですね。ホントに。ホントに。

公式HP
予告編はこちらで見れます→http://www.unitedcinemas.jp/toyosu/sorezore/

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2008/05/04

映画ニュース:『ブラインドネス』カンヌでオープニング上映!

映画『ブラインドネス』は映画通.comでも紹介した「シティ・オブ・ゴッド」や「ナイロビの蜂」を手がけたフェルナンド・メイレレス監督の監督作。
 映画の内容はというと、突然視覚を失ってしまうという謎の伝染病が広がってしまうというパニックサスペンス。

 この映画のキャストがまたとても豪華。ジュリアン・ムーア、ガエル・ガルシア・ベルナルなどと一緒に、日本からはなんと伊勢谷友介、木村佳乃の二人が出演するのです!!

さらにこの「ブラインドネス」がカンヌ映画祭のオープニングを飾ることが決まったそう!
カンヌでどんな評価が集まるのかも注目です!

ちなみに日本での公開は11月から!

公式HP

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2008/04/17

「アイリス」

2002年公開のイギリス映画。
晩年、アルツハイマーで苦しんだ実在の女性作家、アイリス・マードックと彼女を長年愛し支えた夫、ジョン・ベイリーの物語です。
深い愛に満ちた映画です。

アイリスは、イギリスで「最も素晴らしい女性」と言われ、多くの人の尊敬を集めている存在。
映画では若き日のアイリスをケイト・ウィンスレットが、晩年のアイリスをジュディ・デンチが演じています。(何とも贅沢ですね!)

若き日のアイリスとジョンはオックスフォード大学で出会います。美しく、恋も奔放で、知性と才能溢れたアイリスに、ジョンは一目ぼれ。控えめで目立たない存在のジョンだったが、彼の純粋さに次第に惹かれていったアイリス。その後、二人は結婚。
老年の二人は穏やかに愛情を育んでいましたが、アイリスは次第に物忘れが酷くなり、アルツハイマーになってしまうのです・・・。

晩年のアイリス、ジュディ・デンチの演技は、感動ものです。演技という事を忘れさせ、切なくて胸が痛くなるほど、アルツハイマーを患ったアイリスを体現しています。
ジョンを演じたジム・ブロードベントの演技もまた、心に迫ってくるものがありました。

アルツハイマーという形で、自分自身の正常さを失っていくアイリスの戸惑いや悲しみと、成す術もなくそれを見守り包み込むしかないジョンのやるせない悲しさに、いたたまれなく悲しい気持ちになりながらも、二人に溢れる愛情、慈しみ合う気持ち、絆の強さが、眩しくて優しく染みてきて、何とも言えない気持ちになるのです。
この映画の良さは、その二つの感情を同時に味わうところにあるんじゃないでしょうか。

オススメです。

評価:★★★★☆


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2008/04/13

「シティ・オブ・ゴッド」

これは傑作!!です。

舞台は1960年代から1980年代。ブラジルのリオデジャネイロ近郊にある「神の街」と呼ばれるスラム街。そこは、子供達が平気で銃を持ち、少年ギャング達が街を走り回っている世界。
実話を元に描かれたこの作品、銃を持っている子供達や"殺し”を語る子供達の姿を見ても、最初はそのことが現実とは受け入れがたく、映画の中だけの世界のように感じます。
しかし、こういった状況が紛れも無く現実に起こっているという事実。そのことにまず衝撃を受けます。

それに加えて、この映画は作品として衝撃的に素晴らしい出来映えです。
テンポが早くて、無駄がない。
群像劇でもあり、さらに時間の流れがある、という物語の構造がうまくまとまっている上に、
暴力、ストリートチルドレンの犯罪、抗争といったモチーフの中に、少年達目線の日常や友情もバランスよく描かれています。
そこに、要所要所でやってくる緊迫感。
最後まで怒涛の勢いで映画の中に引き込みます。


この「シティ・オブ・ゴッド」の監督は、「ナイロビの蜂」などのフェルナンド・メイレレス監督。
一部のキャストを除き、ほとんどの主要キャストを現地のスラム街で暮らす素人から採用したそう。
オーディションと演技訓練を重ねて臨んだそうですが、リアル感という点でもそれが功を奏した印象です。
とはいえ、映画の中で映し出されたものは、きっとまだまだ生ぬるいものでしかないでしょう。
現地ではもっと目を背けたくなるような状況だろうということが想像に難くありません。

ラストは、本当に「やられた!!」といった感じ。
非常にライトな幕引きに、その無常さを見せつけられます。

未見の方は、ぜひ!

評価:★★★★☆(4.5)


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2008/04/09

「エターナルサンシャイン」

単なる“切ないラブストーリー”的映画と想像したら、大間違い。いい意味で期待を裏切ってくれることでしょう。
もちろん「切ない」要素はあるものの、よくある恋愛映画の類ではなくて、とっても良く考えられた展開の、非常に“キュート”な作品でした。

主人公ジョエルを演じるのは、ジム・キャリー。「え、この人がジム・キャリー?!」と思うほど、コメディタッチの映画ではしゃいでる彼とはキャラが全く被らず、まるで別人のよう!!

ケイト・ウィンスレットも「演技の幅が広いなあ、、」と最近思うのですが、この映画でもその演技の上手さは健在。
監督はミシェル・ゴンドリー。ビョークやレディオヘッドなどそうそうたる人気ミュージシャンのミュージック・ビデオやCMなどを数々手掛けています。脚本は「マルコヴィッチの穴」なども手がけた人気脚本家のチャーリー・カウフマン。強力な二人がタッグを組んだわけですね。

舞台は冬のN.Y.。喧嘩別れした恋人のクレメンタインが自分の記憶を消したという事実を知ってしまったジョエル。
あまりのショックに、彼は自分も同じように彼女の記憶を消すことを決意。しかし脳の中でクレメンタインとの思い出を巡るうちに、「記憶を消したくない!」と気づくジョエル。しかし、記憶消去の作業中は睡眠状態。彼の意思ではその作業を止めることもできず、脳の記憶の世界で必至にもがくが・・・といったストーリー。
 
現在、過去、ジョエルの脳の中の記憶・・・などのシーンが交錯して、どれが過去でどれが現在?どれがリアルな世界?と、わからなくなるところもありますが、見終えると「なるほど!!」と納得します。

この映画は二度以上観ることをオススメします。時間軸やいろんなことがわかってきて、二度目はまた違った発見や味わいがあるのです。

人為的に「記憶を消す」という非日常のファンタジー、
愛しい思い出や感覚、ちょっとした恋のすれ違い・・・といった、観る人が自分の日常になぞらえてリアルに共感できること、その両方がバランスよく合わさった、いい映画じゃないでしょうか。


評価:★★★★☆

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2008/04/05

「シャンドライの恋」

1998年公開。「ラストエンペラー」の監督として、その名を世界に轟かせたベルナルド・ベルトルッチ監督の監督作品です。
そして主演はタンディ・ニュートン。この映画の後、「ミッション・インポッシブル2」のヒロインに抜擢されたので彼女を知ってる人も多いでしょう。

私は圧倒的に、この「シャンドライの恋」の彼女の方がキュートで魅力的だなあ、、、と思うのですが、皆さんいかがでしょう。
 

 政治活動をしていた夫が逮捕され、アフリカから単身ローマに渡ってきたシャンドライ。シャンドライは孤独なイギリス人ピアニスト・キンスキーの邸宅で家政婦として住み込みで働きながら、大学に通う。

 無口なキンスキーとシャンドライの間には会話は少なかったが、キンスキーはシャンドライに惹かれていく。そして、シャンドライに求婚まで。
 最初は彼のその愛の深さを知らなかったシャンドライも徐々に彼の無償の愛情に心が揺れ動き始める・・・といったストーリー。
 

 印象的なのは、劇中で印象的に描かれていた螺旋階段。そして螺旋階段の下から上を見上げるシャンドライの表情。
 
 アフリカの民族音楽や、クラシックのメロディ、シャンドライの好きなアフリカのポップミュージック、それぞれのシーンで、その感情が音楽に乗って表現されている、その演出も素敵。
 
 
 伝えたくても伝えられない想いを言葉意外で示すキンスキー。それが彼の行動だけでなく、映像であったり、音楽であったりから伝わってくる、だからなのか、この映画からは何だか「香り」がするんです。
「香り」を感じる時の感覚のように映画を味わう感覚。
 
 だからこそ余韻を残すのだと思うのです。
 

 ラストシーンは本当に素晴らしいです。結果は観る人次第で違うでしょう。
 
 とても美しい映画でした。 
 

 余談ですが、ダウンタウンの松本人志さんも、「シネマ坊主」という映画批評本の中で、この「シャンドライの恋」について書いていましたが、評価(特にラストシーン)は高く、10点満点中、9点。


評価:★★★★☆


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2008/03/27

「セント・オブ・ウーマン / 夢の香り」

1992年公開、アル・パチーノの熱演が光る、人間ドラマ。アル・パチーノはこの映画の演技で、7度目のノミ ネートにして、ようやくアカデミー最優秀主演男優賞を獲得しました。

アル・パチーノが演じたのは、気難しくて人間嫌いな盲目の退役軍人。そしてクリス・オドネルが、彼を支えた、心優しいエリート苦学生を演じました。

クリス・オドネル演じるチャーリーは名門高校に奨学金で入学、彼はたまたま同級生達が校長にした悪質なイタズラを目撃してしまった。そのことで、校長に犯人の名を言うよう、要求される。言わずに退学になるか、同級生達を売り、名門大学への推薦を得るか、苦悩するチャーリー。
 後日、チャーリーは、盲目の退役軍人・フランクの世話というアルバイトを始める。フランクは人間嫌いで気難しく、強引。人生に希望を持たず、自らの命を絶とうという密かな計画をしていた。そのためにニューヨークへ、最後の豪華な旅にチャーリーを連れて行く。最初は困惑するチャーリーだったが、次第にお互いを受け入れ始めていき・・・といったストーリー。

この映画で、“名シーン”と語りつがれている忘れ難いシーンといえば、アル・パチーノ演じるフランクが申し出て、ガブリエル・アンウォー演じる、レストランで偶然会った女性とタンゴを踊るシーン。
フランクは盲目ながら、完璧に彼女をリードし、誰もが惹きつけられるような迫力のタンゴを踊ります。

人生に絶望しているフランクですが、まだ体の奥に眠っている「生」のエネルギーや、彼の人間的な魅力が象徴されるような場面で、圧倒されます。 本当にかっこいい!

そして、後半のフランクの自殺を必至で食い止めようとするチャーリーとのやりとりの場面は、強烈な緊張感と一緒に、涙をこらえることができません。 
また、終盤の講堂でのフランクの演説も圧巻です!!

評価:★★★★☆

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2008/03/23

「プリシラ」

広大なオーストラリアの大地、真っ青な空の中をバス「プリシラ号」が走るロードムービー。
その広大な自然も含めて、主人公3人の物語、映画そのものに元気をもらえる、そんな愛すべき映画なのです。

シドニーのクラブのショーで踊っていた3人のドラッグ・クイーン、性転換をした バーナデットとバイセクシャルのミッチ、若くて騒がしいフェリシアが、プリシラ号と名付けたバスに乗って、オーストラリア中部の砂漠の真ん中にあるリゾート地でショーをするため 3000キロにわたる旅に出ます。
途中、ミッチは目的地のホテルでは別れた妻と自分の息子が待っていることを告白するが・・・といったストーリー。

派手でゴージャスな衣装の眩しさに負けず劣らず、「彼女達」の振る舞いは底抜けに明るいのですが、その心の内側にはもちろん抱えている哀しみや切なさがあります。

田舎に行けば行くほど、ゲイに対する差別や偏見の強さを目の当たりにし、傷つく3人。それでも彼女達は前に進むのです。傷ついた事も、自らの失敗も、次の日にはカラッと笑い飛ばすんです。
それは、けして皆、心が強いわけではないのです。それでも人生は続いていくのだし、彼女達のショーはいつも明るく、楽しく美しいもの。

この映画が観る人を元気にさせてくれるのは、人間の愛おしさを感じさせてくれるから
そんな気がします。


評価:★★★★☆

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2008/03/21

「明日へのチケット」

2006年後半に公開したこの「明日へのチケット」、この映画は、「ぜひ!」とオススメしたい映画の一つ。

 世界的にファンも多く、監督陣からも尊敬の念を集めている名匠3人の監督が共同監督として製作しているのだから、ひじょーーーに贅沢!な映画です。
 3人の監督全員がカンヌ映画祭でパルムドール(グランプリ)を取っているのですよ。
 その3人の監督はというと、
「木靴の樹」のエルマンノ・オルミ監督
「ケス」「SWEET SIXTEEN」「麦の穂を揺らす風」などの私の好きなケン・ローチ監督
「友だちのうちはどこ?」「桜桃の味」などのアッバス・キアロスタミ監督

 この映画の企画の始まりは、キアロスタミ監督の提案によるものだそう。そして、キアロスタミ監督自身が組んでみたい監督として挙げた2人がエルマンノ・オルミ監督とケン・ローチ監督。そしてこの2人の監督に話を持ちかけたら、直ちに「もちろん!」との快諾の返事が来たそうです。

 映画の物語はヨーロッパを横断する同じ列車に乗っている人達という設定のもと、3つの話をそれぞれの監督が製作。そして、その3つの話が完全に独立したオムニバス映画という訳ではなく、登場人物が物語の中でほんの少し重なり合う・・そんな1本の映画としてのつながりがある構成なのです。
 3つのお話全てが、それぞれに違う形の味わい深い余韻を残す、素敵な作品です。

エルマンノ・オルミ監督のお話は、出張先で出会った女性秘書に想いを馳せる初老の大学教授の話。
アッバス・キアロスタミ監督のお話は、兵役義務の一つとして、将軍の未亡人(これがまたびっくりするほどわがまま放題で放漫!)の面倒を見ている若い青年の話。
ケン・ローチ監督のお話はスコットランドのサッカーチーム、(中村俊輔選手の活躍でもお馴染みの)セルティックのローマでの試合を観るために興奮しながら列車に乗る3人の少年達と難民家族の話。

オルミ監督のお話は淡々と流れるように続くのですが、大学教授の心の内の切なさや記憶と空想の重なり合い、心情の揺れといったものと場の状況の描写、それらの演出が何ともマッチしていて、ただただ「さすがだなあ」と惚れ惚れしてしまう一作。

キアロスタミ監督のお話はシニカルながらも、後からじわじわとその良さが心に染みてくるような一作。厳しさと共に、希望を残す後味。

ケン・ローチ監督のお話はわかりやすいストーリー展開の中に、すごく清清しい爽快感を残しました。ケン・ローチ監督の「SWEET SIXTEEN」でも主役を務めたマーティン・コムストンやその友達役を演じたウィリアム・ルアンなどが出演!
「人を信じる」というメッセージが観ている私達に希望を感じさせてくれたのかもしれません。
ラストがまた良かった!

それぞれの監督の人間への温かい眼差しを感じて、心満たされる、いい映画です。

公式HP(予告編も見れます)

評価:★★★★☆(4.5)

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2008/03/17

「ノーカントリー」

アカデミー賞で、作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の4部門受賞のほか、各地の映画祭で数々の賞を立て続けに獲得していた話題作「ノーカントリー」。
 
 ハビエル・バルデムの“怪演”とその不気味な怖さは、いろんな所で取り沙汰されていましたが、、、その期待?!に見事に応えました。 
いやはや、本当に怖かった!! 
ハビエル・バルデムの演技とあの強烈なキャラクターを見事に作り上げた巧みな演出は大成功といった感です。

 狩りをしていたルウェリンは、偶然、何人もの死体が転がる現場に遭遇。大量のヘロインと200万ドルの大金を発見する。危ういと感じつつも、その大金を持ち去る。それがきっかけで、ハビエル・バルデム演じる殺し屋シガーに追われることになる。
また一報では、ルウェリンが事件に巻き込まれ、危険な状況だと察知したトミー・リー・ジョーンズ演じる保安官のベルは、2人の行方を追い、3人の追跡劇が始まるが…。

その謎の男、シガーの凶器もまた不気味。 酸素ボンベから出たホース。その先から出る圧縮空気が彼の凶器。これが部屋の鍵も一発で開ければ、人間も一撃で殺せてしまうんですから。
このシガー、セリフは少ないながらも、そのなんともいえず匂いたつ狂気と、いつ現れるか、何をしだすかわからない恐怖感で、観る人の気を一時もゆるませることなく最後までスクリーンにひきつけます。 
あのマッシュルームカットがまた、素晴らしく怪しいキャラクター作りに効果絶大でした。

ルウェリン役のジョシュ・ブローリンもベル保安官役のトミー・リー・ジョーンズも、はまり役。

無駄の無い展開と、印象的な映像で、見応えのある映画でした。

(c)2007 Paramount Vantage,A PARAMOUNT PICTURES company. All Rights Reserved.

評価:★★★★☆

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2008/03/13

「リトル・ミス・サンシャイン」

 2006年の末から2007年冬に公開したこの「リトル・ミス・サンシャイン」、最初は上映館も少なかったのに口コミでどんどん人気が広がって予想以上の大ヒット となったことでも話題になりました。
 サンダンス映画祭では、配給権の契約金が同映画祭史上最高額にまでなったそう!

 東京国際映画祭のコンペティションでは最優秀監督賞、主演女優賞と、観客の投票で決まる観客賞も受賞し、見事三冠!
 さらにアカデミー賞では作品賞は逃したものの、おじいちゃん役のアラン・アーキンが最優秀助演男優賞を獲得、また最優秀脚本賞も受賞しました。


 「リトル・ミス・サンシャイン」コンテスト(いわゆる子供版ミスコン)の決勝に繰り上げ参加することになった主人公オリーブ。ちょっとぽっちゃりで、大きなめがねがトレードマーク。

 家族は皆キャラの濃い面々ばかり。長男はパイロットになることだけを夢見て、家族が嫌いで常に沈黙。おじいちゃんはヘロイン常用。叔父はゲイで失恋をきっかけに自殺未遂。お父さんは独自の成功論をビジネスにすることに夢中。そんな家族をまとめようと、一人奮闘する母親。

 そんなバラバラ家族が「リトル・ミス・サンシャイン」コンテストにオリーブを参加させるため、一同総出で、ぼろぼろフォルクス・ワーゲンのミニバスでカリフォルニアへ。アリゾナからの長い旅路が始まるが・・・。


 なんといっても主人公・オリーブを演じるアビゲイル・ブレスリンちゃんの何ともキュートなこと!!!

 この子がミスコンに?といった意外性がまた面白いし、すれてないところがまたかわいい!
 随所に散りばめられた風刺、ユーモアがまたほど良いのです。

  コミュニケーションも互いの思いやりも、どことなくちぐはぐで、危うい空気の流れていた家族が、いろんなハプニングにみまわれながらも、不思議な一体感が生まれてテンションが上がっていく・・その様が観ていてとっても爽快!!
 
 それぞれの人物設定も非常に上手くできているし、妙に親近感のわく愛すべきファミリーの奮闘?!ぶりに、ついつい声を出して応援したくなっちゃうんです。これが。


  最優秀脚本賞も納得の奇妙な盛り上がりを見せる終盤は面白いですよ! 観てのお楽しみ。
 笑いながら泣いてしまって、そしてちょっぴり元気になる。 オススメです。

評価:★★★★☆


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2008/03/11

映画ニュース:ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ、共演映画 予告編!

ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが95年公開の「ヒート」以来の共演!!というなんとも贅沢な映画「ライチャス・キル(Righteous Kill)」の予告編が、アメリカの映画サイト「Movie Web」でアップされました!

日本での公開はまだいつ頃かわかりませんが、全米での公開予定は9月。

ニューヨークを舞台に、連続殺人犯を追うニューヨーク市警の刑事コンビを演じるロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ

「ヒート」では敵味方の役で共演シーンはほんのわずかだったようですが、今回はコンビとして事件の解決に挑む役どころ。そんな訳で、二人の共演シーンは非常に多いようです。

映画ファンとしては、非常に楽しみですね! 日本での公開予定を引き続き注目して要チェックですね。



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2008/03/08

「パリ、ジュテーム」

「パリ、ジュテーム」 はそのタイトルどおり、パリの20区のうち18区を舞台にした、5分の「愛」にまつわるショートムービーのオムニバス映画。
もちろん全篇パリでの撮影!

監督達の顔ぶれは思わず拍手!のそうそうたる豪華な面々! 
「エレファント」「グッドウィルハンティング」のガス・ヴァンサント監督、「ファーゴ」「ノーカントリー」のコーエン兄弟、「モーターサイクルダイアリーズ」のウォルター・サレス監督、ウォン・カーウェイ監督作の撮影監督としても有名なクリストファー・ドイル監督、「M/OTHER」でカンヌ映画祭国際批評家連盟賞を受賞した日本の諏訪敦彦監督、「ラン・ローラ・ラン」「ヘブン」のトム・ティクヴァ監督、フランスを代表する俳優ジュラール・ドパルデューが監督として参加・・・などなど、
「すごい!」の一言につきます。  

それぞれのストーリーはもちろん様々な愛の形が描かれています。

印象に残ったお話の中からいくつか紹介。
 コーエン兄弟の1区はカップルの痴話げんかに巻き込まれる旅行客のお話。コミカルで、ハラハラさせ、やっぱり上手い!といった感じ。
 「死ぬまでにしたい10のこと」のイザベル・コイシュ監督の12区は別れを切り出そうとした妻に死期が近づいていることを告げられた男の話。 妻を愛する夫を演じるうちにかけがえのない時間を過ごすそのストーリーは人生の不思議なめぐり合わせを感じて、短い5分の間でも味わいあるものでした。
 トム・ティクヴァ監督の10区、ナタリー・ポートマンが女優志望の女性を演じ、盲目の学生と恋愛をするというお話では、5分で見事に彼らの濃密な日々を伝え、上手に感情移入させてくれました。長編映画のように起承転結が見事に構成されていて印象的。

 リアルな作品もあればファンタジックな作品も。ショートムービーの醍醐味も難しさも感じられます。
 舞台はパリの街だけど、世界の街のどこかで繰り広げられる出会いや別れに想いをはせ、ちょっとセンチメンタルな気持ちにもなりますが、人生そのものの面白さを感じられる愛すべき作品です。


評価:★★★☆☆

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2008/03/02

映画好きにオススメの映画館(1)

今回は映画館の話。
映画好きに嬉しい映画館、飯田橋の「ギンレイホール」をご紹介。

ここは、ロードショーが終わった映画から二作を選んで、二本立てで上映してくれる映画館
「あの映画、観たかったんだけど観逃しちゃった・・・」と思ってる頃に上映してくれたりするのが嬉しいのです。しかもセレクトも結構いい!!

さらに、「ギンレイシネマクラブ」という、1年間観放題のシネパスポートシステムがあって、料金は1人分で10500円というお得さ!
ギンレイホールでは2週間ごとに、二本立ての上映映画が変わりますから、年間50本以上上映されている計算。
全作はさすがに観れないでしょうが、映画好きで観に行く時間が比較的取りやすい方には、絶好のシステム!なのでオススメです。

4月5日から2週間は「めがね」も上映、5月17日から2週間は「4分間のピアニスト」も上映します!
見逃した方は、ぜひ。
けして無くなってほしくない映画館ですね。。。

飯田橋ギンレイホール 公式HP


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2008/02/26

「美しすぎる母」

試写会に招いていただき、「美しすぎる母」を観てきました。

 この映画はトム・ケイリン監督が、息子による母親殺害という実際に起こったセンセーショナルな事件を元に映画化したもの。主演は「めぐりあう時間たち」や「エデンより彼方に」でもおなじみのジュリアン・ムーア。
 昨年のカンヌ映画祭で上映された際も、その衝撃的な内容で話題をさらったとのこと。

 ジュリアン・ムーア演じるバーバラは貧しい育ちながらも、大富豪であるブルックスと結婚。二人は息子、アントニーを授かり、バーバラは憧れだった上流階級での華やかな生活を送る。様々な国々を旅し、社交界を渡り歩く日々を過ごすが、ある時ブルックスはバーバラも息子アントニーをも捨て去っていく。
傷ついたバーバラもアントニーも、精神のバランスを失い、二人の心の歯車はどんどん狂っていく・・・。そして衝撃の結末へと向かっていく・・・。

 全体を通して、うっとりするほどの美しい映像。ファッションもしかり。
しかし、それよりも鮮烈に記憶に残ったのは、ジュリアン・ムーアの演技の素晴らしさ、そしてその美しさ。
「美しさ」という言葉だけでは表現し足りませんが、バーバラのその女性としてのあり余るほどの魅力、危うさ、儚さも、複雑で説明しがたい心情も、とても見事に表現していたように思います。

 その衝撃的な内容、きっとこれから公開が近づくにつれ、どんどん話題をふりまいていくことでしょう。
 そのストーリーの感想の続きはまた後日!!
  
photo:(c) Lace Curtain, Monfort Producciones and Celluloid Dreams Production

公式HP 
初夏、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー

評価:★★★★☆

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2008/02/24

「窯焚」-KAMATAKI-

 ヒジョーに渋くてカッコイイ俳優・藤竜也さん主演の「窯焚」を観てきました。
しかも舞台挨拶付き!

 この映画はカナダの監督、クロード・ガニオン監督が日本を舞台に日本の伝統文化である陶芸、かつ今では数少なくなった日本古来の陶器を焼く過程「窯焚」を題材にした異色の作品。
モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞、観客賞など史上初の5冠に輝いた映画なのです!

 日系カナダ人青年のケンは父の死によって、人生そのものに意欲を失い、自殺未遂までしてしまった。母親のはからいで叔父である著名な陶芸家・琢磨の元でしばらく過ごす事に。
 信楽の町で琢磨の奔放さや人間としての魅力に触れながら、次第に心を開いていく。そして「窯焚」に挑むケンの心にはそれまでには無い感情が芽生えていく・・・。

 この映画の中で行われる「穴窯」という窯を使っての窯焚という行程は今はその過酷さから随分少なくなってしまったとのこと。日本特有の文化でもあり、古代技術の最高峰とも言われるそうです。
 約10日に渡って、昼夜寝ずに約7分おきに薪をくべ、穴釜を1300度以上の高温に保つ事も要求されます。人工的なうわぐすりを使わずに焼くその手法によって、独特の風合いや美しさを見せるとのこと。
 実際、映画の中で映し出される作品の一つ一つも吸い寄せられるほどに素晴らしく美しいものでした。

 陶芸家・琢磨を演じる藤竜也さんは実は陶芸が趣味で10年以上もやってきたとのこと。また驚くべき事に実はガニオン監督はそれを知らずに藤竜也さんにこの役をオファーをしたそうなんです。(びっくり!かつなんだか運命的!)

 クロード・ガニオン監督は約1年に渡り、舞台になった信楽に住み、世界的陶芸家・神崎紫峰さんの穴窯で、実際に約10日に渡る窯焚の作業に参加。その窯焚の行程はもちろん、その前の窯入れから、窯開きなど一連の作業、また信楽の町など様々な事を勉強したようです。
並々ならぬその情熱がスクリーンを通して伝わりました。
また映画で見られる美しい陶器のほとんどは神崎さんの作品とのこと。

 「穴窯」という普段見る事のできない窯で陶器を焼くその行程を、物語を通して見られたことも非常に貴重な経験で、とても興味深いものでした。

 周囲のあるがままを受け入れる琢磨の自然体な生き方、窯焚の炎、ケンの心の中を駆ける様々な変化を観ていく中で、浄化されるような穏やかな気持ちと炎に象徴される激しい熱、相反するような二つの気持ちが自分自身にもやって来る・・・そんな何とも言えない独特の魅力に溢れた映画でした。

 映画の中で琢磨が「杯を空にしなさい」と語るシーンは、いつまでも心に残るシーンでした。


公式HP  新宿バルト9で2/23より公開。全国で順次ロードショー。


評価:★★★★☆

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「潜水服は蝶の夢を見る」

 また一つ、素晴らしい映画に出会いました。
「バスキア」や「夜になるまえに」を手がけたジュリアン・シュナーベル監督の監督作、「潜水服は蝶の夢を見る」です。

 「潜水服は蝶の夢を見る」
 このタイトルを初めて見た時、その何とも不思議なタイトルに興味が湧きました。
 気になりませんか?このタイトル。その意とすることはどんなことか? 
それを知りたい衝動にかられました。
 映画を観終えてみると、主人公の状況・心境がすごく良く表現されている言葉だとしみじみ感激したのでした。
 
 この映画は実在した人物がモデル。彼が自ら記した奇跡のようなお話を元に作られました。
 フランスのELLE誌編集長をしていたジャン=ドミニク・ボビーは、43歳という若さで脳梗塞で倒れ、第一線で活躍していた日々が一変、唯一左眼の瞼しか動かない身体に。
 彼がしばらくの昏睡状態から目を覚ましても自分の言葉が周りに通じない。それだけでなく、体も全く動かないという耐え難い現実をつきつけられます。

 彼が彼の外界とコミュニケーションするために言語聴覚士が考え出した素晴らしい方法はアルファベットを一字ずつ読み上げ、それを彼がまばたきで合図するというもの。
 そして恐ろしく気が遠くなるほどの行程を経て彼は一冊の自伝本を書くのです。根気強く彼のまばたきの合図を書き取った女性クロードの協力を得て。

 映画の序盤、ジャン=ドミニク・ボビーがいかに悲しみ深く、いかにもどかしいかをとても巧みに観る人に感じさせます。カメラは主人公の「眼」の代わりになり、そこから見える人々や光景を映し出し、観客である私達を疑似体験的な感覚にさせてくれるのです。  
 
 彼の発した言葉で、とても眩しく、目の前がさーっと開けたような光をくれたこと、それは、
 「記憶と想像力が無限である」ということ。「それによってどこまでも旅が出来る」ということ。

 映画を評する言葉として「希望を与えてくれる」という言葉は使い古されているかもしれませんが、
この映画は、そしてジャン=ドミニク・ボビーの生き様は、
人間そのものがどれだけの希望を秘めたものなのかを、これでもかと見せつけてくれました。光を、希望を、くれました。
 自分にとってもこの映画との出会いはとても意義のある数時間であり、多くの人にとっても意義のある出会いになると確信できました。

 また、最後に知らされる運命的な事実は鳥肌が立つほど感動的!
 まだ観ていない人はぜひ!

2008年2月9日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開
photo: ©Pathe Renn Production-France 3


評価:★★★★☆


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2008/02/14

「デカローグ」

 監督はもう既に96年に亡くなられていますが、「トリコロール」三部作や「ふたりのベロニカ」の監督でも知られるポーランドの巨匠、クシシュトフ・キェシロフスキ監督の作品。彼を尊敬する名匠監督も多いと言われています。
 デカローグは約1時間のお話が10話あるオムニバス。元はテレビシリーズだったんですが、各国で劇場公開され、カンヌの審査員特別賞やヨーロッパ映画祭のグランプリなども受賞した作品です。

 「時計じかけのオレンジ」などでも有名なスタンリー・キューブリック監督が「デカローグ」をこう評しています。

「この20年で1本だけ好きな映画を選ぶとすれば、間違いなく『デカローグ』である。」
 キューブリック監督がそこまで言っていると聞くと、映画ファンの方は気になりませんか???

 
十戒をモチーフにした、10のエピソード。全てのお話に「ある○○○に関する物語」というタイトルがついています。
全てのタイトルは以下。

第1話:ある運命に関する物語
第2話:ある選択に関する物語
第3話:あるクリスマス・イブに関する物語
第4話:ある父と娘に関する物語
第5話:ある殺人に関する物語
第6話:ある愛に関する物語
第7話:ある告白に関する物語
第8話:ある過去に関する物語
第9話:ある孤独に関する物語
第10話:ある希望に関する物語

 まだ全てのお話を観ていないうちにコラムを書くのもどうかと思ったけれど、好きな映画の中でもある種の「特別感」を感じるこの映画、ぜひ知って欲しいので紹介しました。
 
 ふとした時間の流れや会話の先に何が待っているのかという絶妙な緊迫感と素晴らしい心理描写と演出。さすがです。
非常に深みのある作品ばかり。理屈抜きに引き込まれます。


 いくつか観たうちで印象的だったのは第4話「ある父と娘に関する物語」
非常に仲よく暮らす父と娘。亡くなった母親が残した1通の手紙をきっかけに、穏やかな日常を過ごしていた2人の間に大きな感情のうねりが生じます。

 今回は序章といった感じでこの辺りまで。
 また後日、コラムの続きを・・・。


最後にキェシロフスキ監督が残した言葉で、興味を引く印象的な言葉を紹介。

身を切るような孤独を知っている者だけが、人生の美しさを真に享受することができる


評価:★★★★☆


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2008/02/10

「アース」

 今まさに大ヒットで公開中、すごく楽しみにしていた「アース」をようやく見てきました。
 なんて素晴らしい映画でしょう!!
 こんな映画が完成したこと自体、奇跡と言えるんじゃないでしょうか。
 「地球」というとてつもない奇跡の塊を、こんなにもまざまざと見せてもらえたことに、もうただただ感謝するばかり、制作にたずさわった方々に敬意の念でいっぱいになりました。
 生きているうちに絶対に目にすることもできない自然や生き物達の現実、その光景の連続なのですから。

 大ヒットした海洋ドキュメンタリーの「ディープ・ブルー」と超人気TV番組「プラネットアース」のスタッフが結集。制作年数5年、撮影日数も4500日、撮影地も世界の200箇所以上・・・
 映画を観ていても、気が遠くなるほどのその撮影や制作の壮絶さ、その過程にはスタッフの様々な困難があっただろうと思いを馳せずにはいられません。

 そこには地球の紛れもない真実があって、ただただ圧倒され、感動と驚きの連続です!
 ホッキョクグマの愛らしい親子の目覚めに始まり、300万頭もののトナカイの群れやトナカイの子供を狙い追いかける狼、ゾウの群れの長く過酷な行進、ライオンとの危機迫る戦い、信じられない光景、ザトウクジラの親子の貴重な映像・・・。
 野生の動物の習性に驚き、食うか食われるかの動物達の過酷な現実を目の当たりにしては驚き・・・。
それからホッキョクグマの子供も、オシドリの雛達の初飛行の姿も、かわいくてたまりませんでした!

 また、ザトウクジラ親子を撮影したカメラマンのコメントによると、ザトウクジラの母親になんと2mという近さまで近づき撮影できたとのこと。そして、そばへ寄ってもリラックスをしていて、これは信頼関係を築けた証だと。
この撮影も自分の身の危険にさらされながらの撮影だったのですから。

 「アース」は「地球」の今をこれほどまでも伝えてくれ、私達がこらから地球を守るためにすべきことを問いかけます。
 これはもう、「観てほしい」というより「観るべき!」と声を大にして言いたい壮大な壮大な映画です!

(C) BBC WORLDWIDE 2007

公式HP


評価:★★★★★

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2008/02/05

「パリ、テキサス」

 大好きな映画の中の一つ、「パリ、テキサス」。
 ヴィム・ヴェンダース監督が世に送り出した名作の一つとしても有名です。
 カンヌ映画祭でもパルムドールを受賞。公開から20年以上たった今でも、色あせません。
 様々な要素が入りながら、それらが完璧に組み立てられ、素晴らしく完成度の高いドラマじゃないでしょうか。

 主人公のトラヴィスは4年前に家族の前から姿を消し、荒野を放浪している。ほとんど言葉を発しない、廃人のような状態でいるところを、弟が迎えに来た。
 最初はコミュニケーションもままならない状態だったのだが、弟の元で一緒に暮らし始めるうちに、徐々に人間らしさが戻ってくる。 
 再会時、「親」という認識を持てていなかった幼い息子との距離も次第に縮まっていき、2人は失踪した妻を探しに行く旅に出ることにするが・・・。

 登場人物それぞれが持つ様々な『愛』の形を感じる事ができます。
 兄弟の愛。親子の愛。時間が積み重ねた愛。男と女の愛。自己愛・・・。 
 愛の形も強さもそれぞれで、それを観ている私達は時に温められ、時には痛々しく思い、時にはどうしようもなく切なてたまらなくなるのです。

 何度も観たいシーンはたくさんありますが、好きなシーンをいくつか紹介。
 昔の映像を見て涙を流すトラヴィス、そしてそれを見て何かを感じとる息子の姿。
 通りを挟んで、トラヴィスと息子が同じ様に歩くシーンのとても微笑ましいこと、
そして、
 後半から終盤にかけての一連のやりとり・・・(状況を書きたいですが、観ていない方の為にあえて我慢!)は涙が止まりません。それぞれの関係性、過去と現在とあふれ出す感情、それらが一気に繋がっていくかのように、鳥肌が立つほどに素晴らしいのです。

 観ていない方は、ぜひぜひ、観てください。
 最高の一作です。


評価:★★★★★

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2008/02/03

「SWEET SIXTEEN」

 心にぐさっと刺さった映画の中の一つ。
 私の好きなケン・ローチ監督の監督作で、2002年に公開。脚本はケン・ローチ監督の映画で何度もコンビを組んでいるポール・ラヴァティ。

 主人公のリアムは、恋人の罪を被って刑務所で服役している母親の出所を心待ちにしている15歳の少年。 リアムの望みは母親と姉達と家族団らんで暮らすこと。ただそれだけ。 丘の上の海を見下ろせる家を見つけ、その家を買うために母親の恋人が持っていたドラッグを盗んで売りさばき、次第にドラッグの売人として出世していくのだが・・・。

 ただただ純粋に母や姉達とのささやかな日常、ささやかな幸せを願うリアム。
そして、その未来を固く信じている姿、純粋すぎるリアムを見せつけられるほどに、リアムの前にやってくるあまりにやり切れない状況が、痛くて痛くて心が締め付けられます。

救いなんて何一つないんじゃないかと途方にくれてしまう中で、本当にごく僅かながらも、希望があるんじゃないかと思うラストシーン、、忘れられないワンシーンです。

ぜひ、観てほしい映画の一つです。


評価:★★★★☆


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2008/01/31

「コーヒー&シガレッツ」

  ジム・ジャームッシュ監督の11話のショートストーリー詰め合わせの映画でしたが、なかなかようございました!
 「肩肘はらないで、見に来てよっ」的な遊び心が感じられるクスクスっと笑うお話達の数々。

 フレンドリーを装いながら、内心とっても気まずかったり、ドキドキしていたり、お互い探り合ってたり。ジャームッシュ監督の「ナイト・オン・ザ・プラネット」でも堪能した「会話」のみの映画。
 コーヒーをすすり、タバコを吸い、「究極のリラックスムービー」というコピーも頷ける、まさに一服ムービーとでもいいますか。
 
 それぞれの話の2人もしくは3人の距離感と会話との関係性を考えながら観たりするのが、リアルの世界で人間観察してるようで、面白い感覚でした。
 なにげなない雰囲気や時間を作り上げるのがやはり上手いなあ・・・とジャームッシュ監督には感心します。  

 登場するキャストは本当に豪華なんですが、トム・ウェイツとイギー・ポップが語るお話や、ケイトブランシェットがいとこ同士の役で一人二役を演じるお話・・などなど、嬉しい「遊び心」が詰まってました!

 主題歌「LuiLui」が映画を見た翌日、翌々日・・・としばらく頭の中をリピートしまくり、、でしたよ。

評価:★★★☆☆

2008/01/29

「やさしくキスをして」

 私の好きなイギリスのケン・ローチ監督の監督作、ケン・ローチ監督には珍しく恋愛映画です。
そして、脚本は同監督の「sweet sixteen」と同じ、ポール・ラバティ。
 
 パキスタン移民2世の男性(カシム)とカソリックの高校で先生をしているアイルランド人女性(ロシーン)のラブストーリー。
 カシムの父親は厳格なイスラム教徒で、カシムに対して、イスラム教徒以外の女性との結婚は許しません。カシムは家族を失うことになるのか、彼女を失うことになるのか、苦しい選択に悩まされるのです。
 
 家族が共にいる事を非常に重視している父親。父親に限らず、家族みながお互いを思う気持ちの強さがとても伝わりました。
 ただ、カシムとロシーンの二人の恋愛においては、内面や葛藤の描き方が少し物足りなかった気がします。いろいろなエピソードを詰め込みすぎてしまって薄らいだような・・・。
 
 ケン・ローチ監督は、この映画の次作でケン・ローチ監督の他、アッバス・キアロスタミ監督(カンヌでグランプリを取った「桜桃の味」の監督です)、エルマンノ・オルミ監督(「木靴の樹」の監督)といった、名匠3人による3話オムニバス映画「明日へのチケット」のうちの1話を監督。
 列車内を舞台に偶然乗り合わせた人達のドラマ。
 この「明日へのチケット」もそれぞれの3話が「さすが!」という映画達で非常に良かったです!!
 ケンローチ監督ファンもそうでない方も、ぜひ!

評価:★★★☆☆

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2008/01/27

「息子のまなざし」

この映画、静か。しかし重厚。
監督はダルデンヌ兄弟。2年前に二人が監督した「ある子供」でカンヌ映画祭でパルムドール大賞とりました。ベルギー・フランス合作。

 主人公のオリヴィエは職業訓練所で更生中の少年たちに木工の仕事を教えている。ある日、その訓練所にフランシスという少年が入所してくる。彼のクラスに入ることになったその少年は、実は、幼い自分の息子を殺した少年だったのだ。
オリヴィエはその事実を少年に伝えることなく、平然を装って教える。 そして少年は何も知らずに徐々にオリヴィエに心を開いていく・・・というようなお話。

映画のラストがすごく良いんです。見終わったあとからも感動がさらにじわじわ効いてくる感じ。
この映画、少年を受け入れられるか、られないか、というテーマではないんですね。きっと。

 主人公のオリヴィエも少年のフランシスもほとんど感情を激しく表に出さない分、こういう状況では人って説明できない感情に陥るんだろうな、と思いました。
こういう風に映画にしたのはかえってリアルさが際立ったようにも感じます。
ドラマティックにしようと思えば、とてつもなくドラマティックになってしまうシチュエーションだけれど、そうしてしまったら見えなくなりそうなものが、逆に際立ったんじゃないかなあと。

以前知人が「油絵よりも水墨画のような美に魅力を感じる」というようなことを言っていたけれど、「この映画ももしかしたら水墨画のような映画だろうか」なんてふと思いました。

監督2人が人間ってものにめちゃめちゃ向き合って、考えに考えて心の奥の気持ちを表そうとしたように感じたし、そして、そんな真摯な姿勢や作り方にも好感をもちました。

それと大きかったのは主人公を演じた俳優・オリヴィエ・グルメの演技。

なんとなく、私の好きな映画、「デカローグ」を思い起こす映画でした。
また見直したくなる映画。

評価:★★★★☆

「ミツバチのささやき」

 この「ミツバチのささやき」、2006年に日比谷シャンテで行われた「BOW30映画祭」での上映映画ラインナップに見事に入っていまして・・幸運にも映画館で見ることができました。  

 監督は
「10ミニッツオールダー(人生のメビウス)」のお話でも書いた、ビクトル・エリセ監督。スペイン出身の監督です。  

 ここ30年位は、約10年に1度のペースでしか、監督作としての映画を発表していません。
 意図的にそうしたのではなく、その間にたくさんの努力をした後で、残念ながら断念せざるを得なかった作品もあったとの事。  
 それだけ公開できた作品達には、きっと思い入れも並々ならぬものがあるでしょう。
私は、前述の映画、「10ミニッツオールダー〈人生のメビウス)」(そうそうたる監督達が集った短編オムニバス映画)で、初めてビクトル・エリセ監督の監督作品に出会いました。      

 そしてこの「ミツバチのささやき」という映画は、 静かで、優しくて懐かしい時間が流れている映画でした。
 
 映画で映し出されるその空間に自分の身を置きたくなる衝動、そんな感覚が何度もやってきました。
 

 小さな頃に素朴に疑問に感じた事、子供ながらのささやかな秘密事、何かを発見した時のドキドキした感覚。
 
 みんながそれぞれに持っている、そんな内に秘めた宝物のような事が集まった、なんとも貴重な時間を見せてもらえたような、そんな特別な映画。
 
 ひとつひとつの光景、映像、少ないながらに語られる言葉。どれも、エリセ監督には天才的な感覚の鋭さがあるんだろう・・と思わせられます。
 

 この映画で感じた良さを言葉にするのがとても難しいのですが、
見終えた後の思いを例えるならば、静かで美しい自然を見て、自然は何も語らないけれど純粋に無条件で感動してしまう、そんな感覚に似ている気がします。  
 
 主人公アナの純粋な気持ちや眼差しを、誠実に誠実に、丁寧に、手のひらで壊れないように優しく包んだまま目の前で見せてくれたような、そんな貴重で温かな映画のように感じました。
   

 そして、伝えずにいられないのは、主人公アナ役のアナ・トレントちゃんのかわいらしさ!!
 これまで私が映画で観た子供達の中で、「ベスト1」と断言します。  
 初めての演技だったようですが、演技とは思えないほど、自然です。
   

 もし観るならば、忙しいさなかではなく、夕暮れ時、なんとなく穏やかな気持ちになりたい時にお薦めの映画です。 


評価:★★★★☆

「マイ ネーム イズ ジョー」

私の好きな監督、巨匠・イギリスのケン・ローチ監督の監督作品でもあります。  

 スコットランドのとある町で暮らす主人公のジョーはアルコール中毒からやっとの思いで断酒でき、失業中ながらもアマチュアのサッカーチームの監督を務め、自分の「これから」を前向きに生きていこうと歩き始めていた。 
 
 そんな時に、甥の家庭問題の相談員のセーラという女性に出会い、二人の間にも恋心が芽生え、少しずつながらジョーの生活は立ち直り始めていた。  
 
 そんな中、甥が巻き込まれてしまったある問題。それを救おうとする心がジョー自身を苦悩させる事へ発展してしまい・・ というようなお話。
 

 ケン・ローチ監督の作品はいつも、夢のようなお話でもなければ、人々に憧れられるような華やかな話でもありません。すぐ隣の家に住むような親近感を感じさせる人達、つつましくも健気に頑張っている人々を照らし出してくれるのです。

 この映画も例にもれず、「ジョー」というとっても温かい愛すべき主人公を描く事を通して、実際に同じ様に苦しみつつも頑張っている人達を応援してくれている気がしてなりません。
 
 そこに心が温められてしまうのです。
 

 「人」に対する愛情がこれほど感じられる監督は稀有だと思うのです。

そこは昔の作品からずっと一環して感じられます。
 

 アル中時代の自己嫌悪にさいなまされる思い出をジョーがセーラに語るシーン。
 
 大事な人を悲しませ、しかし大事な人を救おうとするジョーのどうしようもない心の葛藤。

 そんな苦悩やもがき、切なさを見せられると、心からジョーを応援したくなるのです。
 
 そしてラストにあるほんの僅かなひとすじの希望。
 
 そこがまた、監督の「人」への眼差しの近さ、優しさを感じずにはいられず、心に留まってしまうのかもしれません。
   

 「痛み」を感じつつも「優しさ」を感じられる映画。
 
 そして人が人を支えたい気持ちを信じたくなる映画。
 
 そんな風に思うのです。


評価:★★★★☆

2008/01/23

「ホーリースモーク」

 あの「ピアノレッスン」の監督でもある、ジェーン・カンピオン監督の監督作。
 出演は(タイタニックのヒロイン役の)ケイト・ウィンスレット、(「ピアノレッスン」にも出演した)ハーヴェイ・カイテルです。

 お話はケイト演じる主人公が旅先のインドで新興宗教にのめりこんでしまうことから始まります。どうにかしてその洗脳を解きたいと願う家族達が、彼女をだましてインドから帰国させ、ハーヴェイ・カイテル演じる洗脳を解く専門家に依頼し、彼女を脱教させようとする。
 半ば強引に周囲から隔離した空間で3日間という条件の中、2人が過ごし、向き合う数日間で、思わぬ展開となっていく・・・というようなお話。

 「ピアノレッスン」「ある貴婦人の肖像」 と同監督の前作2作品のクラシックな雰囲気とは、ガラッと変わり、風刺を込めた現代的なストーリー。
 正直、コミカルでもあり、1クセも2クセもあるそのストーリー展開に、頭の中が?マークになる事もあります。とっても「変化球」な映画。
 けれども見終わった時には、なんだか煙に巻かれたような感覚に陥りつつも、ある種真理をついている感もあり、考えさせられてしまいました。なかなか巧みでもあり、不思議な映画でした。

 2人は、その2人だけの空間と時間で、図らずも自分自身の非常に脆い部分を相手に見抜かれ、強く自覚させられる事となってしまいます。それは自分自身を足元から崩されたような、とても衝撃的な事なのだけれど、それを共有したという事実は、数日間ながらも2人に何らかを残さないはずは、ありませんね。やはり。

 あ、そしてこれは書いておかねばなりません。
 この映画で、ハーヴェイ・カイテルの今まで見た事がないような、情けない(?)姿が見られます。
 ちょっと衝撃的です。

 ジェーン・カンピオンという監督は、「人の弱さ、脆さ」を炙り出すように描く事が多い気がします。
 「ピアノ・レッスン」より後、彼女の監督作品で、「すごく良かった!」と思う映画にはまだ出会えていませんが、彼女の監督作品にはつい期待してしまいます。

評価:★★★☆☆

「ボーイズ・ライフ」

 レオナルド・ディカプリオの主演作・出世作。アカデミー賞の主演男優賞に当時最年少で、ノミネートされたんじゃなかったかな、と記憶してます。まさに、ロバート・デニーロがかすんで見えるほど、いい演技をしてました。

 実在の小説家の少年期の実話で、暴力的な、母親のパートナーから逃げ、ついに新たな土地で一から新しい生活を始めた、母と息子のトビー。
 しかし、母親がまた恋に落ち、結婚する事となった相手は、実はとても威圧的で、暴君で、支配的な男だったのだ。 
 そこに行き場のない怒り・反発心を抱えながら、田舎の街を自力で出て行く事を夢見る・・・という様なお話。

 レオナルド・ディカプリオの『目』『表情』、今でも強く脳裏に焼きついています。言葉よりも多くを語り、伝わってくるものがありました。
 多感な時期の様々な感情、それは、義父への何ともいえない憤りや絶望感であったり、将来への希望であったり、その年齢ながらの見栄であったり。

 印象的なラスト、について語りたいけど、見ていない人の為に、、ここは我慢っ。
 憤りだらけの状況に加えて、この年頃だからこその心の葛藤がよく描かれていて、なかなかの良作、と思います!


評価:★★★☆☆