2008/03/27

「セント・オブ・ウーマン / 夢の香り」

1992年公開、アル・パチーノの熱演が光る、人間ドラマ。アル・パチーノはこの映画の演技で、7度目のノミ ネートにして、ようやくアカデミー最優秀主演男優賞を獲得しました。

アル・パチーノが演じたのは、気難しくて人間嫌いな盲目の退役軍人。そしてクリス・オドネルが、彼を支えた、心優しいエリート苦学生を演じました。

クリス・オドネル演じるチャーリーは名門高校に奨学金で入学、彼はたまたま同級生達が校長にした悪質なイタズラを目撃してしまった。そのことで、校長に犯人の名を言うよう、要求される。言わずに退学になるか、同級生達を売り、名門大学への推薦を得るか、苦悩するチャーリー。
 後日、チャーリーは、盲目の退役軍人・フランクの世話というアルバイトを始める。フランクは人間嫌いで気難しく、強引。人生に希望を持たず、自らの命を絶とうという密かな計画をしていた。そのためにニューヨークへ、最後の豪華な旅にチャーリーを連れて行く。最初は困惑するチャーリーだったが、次第にお互いを受け入れ始めていき・・・といったストーリー。

この映画で、“名シーン”と語りつがれている忘れ難いシーンといえば、アル・パチーノ演じるフランクが申し出て、ガブリエル・アンウォー演じる、レストランで偶然会った女性とタンゴを踊るシーン。
フランクは盲目ながら、完璧に彼女をリードし、誰もが惹きつけられるような迫力のタンゴを踊ります。

人生に絶望しているフランクですが、まだ体の奥に眠っている「生」のエネルギーや、彼の人間的な魅力が象徴されるような場面で、圧倒されます。 本当にかっこいい!

そして、後半のフランクの自殺を必至で食い止めようとするチャーリーとのやりとりの場面は、強烈な緊張感と一緒に、涙をこらえることができません。 
また、終盤の講堂でのフランクの演説も圧巻です!!

評価:★★★★☆

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2008/03/23

「プリシラ」

広大なオーストラリアの大地、真っ青な空の中をバス「プリシラ号」が走るロードムービー。
その広大な自然も含めて、主人公3人の物語、映画そのものに元気をもらえる、そんな愛すべき映画なのです。

シドニーのクラブのショーで踊っていた3人のドラッグ・クイーン、性転換をした バーナデットとバイセクシャルのミッチ、若くて騒がしいフェリシアが、プリシラ号と名付けたバスに乗って、オーストラリア中部の砂漠の真ん中にあるリゾート地でショーをするため 3000キロにわたる旅に出ます。
途中、ミッチは目的地のホテルでは別れた妻と自分の息子が待っていることを告白するが・・・といったストーリー。

派手でゴージャスな衣装の眩しさに負けず劣らず、「彼女達」の振る舞いは底抜けに明るいのですが、その心の内側にはもちろん抱えている哀しみや切なさがあります。

田舎に行けば行くほど、ゲイに対する差別や偏見の強さを目の当たりにし、傷つく3人。それでも彼女達は前に進むのです。傷ついた事も、自らの失敗も、次の日にはカラッと笑い飛ばすんです。
それは、けして皆、心が強いわけではないのです。それでも人生は続いていくのだし、彼女達のショーはいつも明るく、楽しく美しいもの。

この映画が観る人を元気にさせてくれるのは、人間の愛おしさを感じさせてくれるから
そんな気がします。


評価:★★★★☆

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2008/03/21

「明日へのチケット」

2006年後半に公開したこの「明日へのチケット」、この映画は、「ぜひ!」とオススメしたい映画の一つ。

 世界的にファンも多く、監督陣からも尊敬の念を集めている名匠3人の監督が共同監督として製作しているのだから、ひじょーーーに贅沢!な映画です。
 3人の監督全員がカンヌ映画祭でパルムドール(グランプリ)を取っているのですよ。
 その3人の監督はというと、
「木靴の樹」のエルマンノ・オルミ監督
「ケス」「SWEET SIXTEEN」「麦の穂を揺らす風」などの私の好きなケン・ローチ監督
「友だちのうちはどこ?」「桜桃の味」などのアッバス・キアロスタミ監督

 この映画の企画の始まりは、キアロスタミ監督の提案によるものだそう。そして、キアロスタミ監督自身が組んでみたい監督として挙げた2人がエルマンノ・オルミ監督とケン・ローチ監督。そしてこの2人の監督に話を持ちかけたら、直ちに「もちろん!」との快諾の返事が来たそうです。

 映画の物語はヨーロッパを横断する同じ列車に乗っている人達という設定のもと、3つの話をそれぞれの監督が製作。そして、その3つの話が完全に独立したオムニバス映画という訳ではなく、登場人物が物語の中でほんの少し重なり合う・・そんな1本の映画としてのつながりがある構成なのです。
 3つのお話全てが、それぞれに違う形の味わい深い余韻を残す、素敵な作品です。

エルマンノ・オルミ監督のお話は、出張先で出会った女性秘書に想いを馳せる初老の大学教授の話。
アッバス・キアロスタミ監督のお話は、兵役義務の一つとして、将軍の未亡人(これがまたびっくりするほどわがまま放題で放漫!)の面倒を見ている若い青年の話。
ケン・ローチ監督のお話はスコットランドのサッカーチーム、(中村俊輔選手の活躍でもお馴染みの)セルティックのローマでの試合を観るために興奮しながら列車に乗る3人の少年達と難民家族の話。

オルミ監督のお話は淡々と流れるように続くのですが、大学教授の心の内の切なさや記憶と空想の重なり合い、心情の揺れといったものと場の状況の描写、それらの演出が何ともマッチしていて、ただただ「さすがだなあ」と惚れ惚れしてしまう一作。

キアロスタミ監督のお話はシニカルながらも、後からじわじわとその良さが心に染みてくるような一作。厳しさと共に、希望を残す後味。

ケン・ローチ監督のお話はわかりやすいストーリー展開の中に、すごく清清しい爽快感を残しました。ケン・ローチ監督の「SWEET SIXTEEN」でも主役を務めたマーティン・コムストンやその友達役を演じたウィリアム・ルアンなどが出演!
「人を信じる」というメッセージが観ている私達に希望を感じさせてくれたのかもしれません。
ラストがまた良かった!

それぞれの監督の人間への温かい眼差しを感じて、心満たされる、いい映画です。

公式HP(予告編も見れます)

評価:★★★★☆(4.5)

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2008/03/17

「ノーカントリー」

アカデミー賞で、作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の4部門受賞のほか、各地の映画祭で数々の賞を立て続けに獲得していた話題作「ノーカントリー」。
 
 ハビエル・バルデムの“怪演”とその不気味な怖さは、いろんな所で取り沙汰されていましたが、、、その期待?!に見事に応えました。 
いやはや、本当に怖かった!! 
ハビエル・バルデムの演技とあの強烈なキャラクターを見事に作り上げた巧みな演出は大成功といった感です。

 狩りをしていたルウェリンは、偶然、何人もの死体が転がる現場に遭遇。大量のヘロインと200万ドルの大金を発見する。危ういと感じつつも、その大金を持ち去る。それがきっかけで、ハビエル・バルデム演じる殺し屋シガーに追われることになる。
また一報では、ルウェリンが事件に巻き込まれ、危険な状況だと察知したトミー・リー・ジョーンズ演じる保安官のベルは、2人の行方を追い、3人の追跡劇が始まるが…。

その謎の男、シガーの凶器もまた不気味。 酸素ボンベから出たホース。その先から出る圧縮空気が彼の凶器。これが部屋の鍵も一発で開ければ、人間も一撃で殺せてしまうんですから。
このシガー、セリフは少ないながらも、そのなんともいえず匂いたつ狂気と、いつ現れるか、何をしだすかわからない恐怖感で、観る人の気を一時もゆるませることなく最後までスクリーンにひきつけます。 
あのマッシュルームカットがまた、素晴らしく怪しいキャラクター作りに効果絶大でした。

ルウェリン役のジョシュ・ブローリンもベル保安官役のトミー・リー・ジョーンズも、はまり役。

無駄の無い展開と、印象的な映像で、見応えのある映画でした。

(c)2007 Paramount Vantage,A PARAMOUNT PICTURES company. All Rights Reserved.

評価:★★★★☆

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2008/03/13

「リトル・ミス・サンシャイン」

 2006年の末から2007年冬に公開したこの「リトル・ミス・サンシャイン」、最初は上映館も少なかったのに口コミでどんどん人気が広がって予想以上の大ヒット となったことでも話題になりました。
 サンダンス映画祭では、配給権の契約金が同映画祭史上最高額にまでなったそう!

 東京国際映画祭のコンペティションでは最優秀監督賞、主演女優賞と、観客の投票で決まる観客賞も受賞し、見事三冠!
 さらにアカデミー賞では作品賞は逃したものの、おじいちゃん役のアラン・アーキンが最優秀助演男優賞を獲得、また最優秀脚本賞も受賞しました。


 「リトル・ミス・サンシャイン」コンテスト(いわゆる子供版ミスコン)の決勝に繰り上げ参加することになった主人公オリーブ。ちょっとぽっちゃりで、大きなめがねがトレードマーク。

 家族は皆キャラの濃い面々ばかり。長男はパイロットになることだけを夢見て、家族が嫌いで常に沈黙。おじいちゃんはヘロイン常用。叔父はゲイで失恋をきっかけに自殺未遂。お父さんは独自の成功論をビジネスにすることに夢中。そんな家族をまとめようと、一人奮闘する母親。

 そんなバラバラ家族が「リトル・ミス・サンシャイン」コンテストにオリーブを参加させるため、一同総出で、ぼろぼろフォルクス・ワーゲンのミニバスでカリフォルニアへ。アリゾナからの長い旅路が始まるが・・・。


 なんといっても主人公・オリーブを演じるアビゲイル・ブレスリンちゃんの何ともキュートなこと!!!

 この子がミスコンに?といった意外性がまた面白いし、すれてないところがまたかわいい!
 随所に散りばめられた風刺、ユーモアがまたほど良いのです。

  コミュニケーションも互いの思いやりも、どことなくちぐはぐで、危うい空気の流れていた家族が、いろんなハプニングにみまわれながらも、不思議な一体感が生まれてテンションが上がっていく・・その様が観ていてとっても爽快!!
 
 それぞれの人物設定も非常に上手くできているし、妙に親近感のわく愛すべきファミリーの奮闘?!ぶりに、ついつい声を出して応援したくなっちゃうんです。これが。


  最優秀脚本賞も納得の奇妙な盛り上がりを見せる終盤は面白いですよ! 観てのお楽しみ。
 笑いながら泣いてしまって、そしてちょっぴり元気になる。 オススメです。

評価:★★★★☆


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2008/03/11

映画ニュース:ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ、共演映画 予告編!

ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが95年公開の「ヒート」以来の共演!!というなんとも贅沢な映画「ライチャス・キル(Righteous Kill)」の予告編が、アメリカの映画サイト「Movie Web」でアップされました!

日本での公開はまだいつ頃かわかりませんが、全米での公開予定は9月。

ニューヨークを舞台に、連続殺人犯を追うニューヨーク市警の刑事コンビを演じるロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ

「ヒート」では敵味方の役で共演シーンはほんのわずかだったようですが、今回はコンビとして事件の解決に挑む役どころ。そんな訳で、二人の共演シーンは非常に多いようです。

映画ファンとしては、非常に楽しみですね! 日本での公開予定を引き続き注目して要チェックですね。



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2008/03/08

「パリ、ジュテーム」

「パリ、ジュテーム」 はそのタイトルどおり、パリの20区のうち18区を舞台にした、5分の「愛」にまつわるショートムービーのオムニバス映画。
もちろん全篇パリでの撮影!

監督達の顔ぶれは思わず拍手!のそうそうたる豪華な面々! 
「エレファント」「グッドウィルハンティング」のガス・ヴァンサント監督、「ファーゴ」「ノーカントリー」のコーエン兄弟、「モーターサイクルダイアリーズ」のウォルター・サレス監督、ウォン・カーウェイ監督作の撮影監督としても有名なクリストファー・ドイル監督、「M/OTHER」でカンヌ映画祭国際批評家連盟賞を受賞した日本の諏訪敦彦監督、「ラン・ローラ・ラン」「ヘブン」のトム・ティクヴァ監督、フランスを代表する俳優ジュラール・ドパルデューが監督として参加・・・などなど、
「すごい!」の一言につきます。  

それぞれのストーリーはもちろん様々な愛の形が描かれています。

印象に残ったお話の中からいくつか紹介。
 コーエン兄弟の1区はカップルの痴話げんかに巻き込まれる旅行客のお話。コミカルで、ハラハラさせ、やっぱり上手い!といった感じ。
 「死ぬまでにしたい10のこと」のイザベル・コイシュ監督の12区は別れを切り出そうとした妻に死期が近づいていることを告げられた男の話。 妻を愛する夫を演じるうちにかけがえのない時間を過ごすそのストーリーは人生の不思議なめぐり合わせを感じて、短い5分の間でも味わいあるものでした。
 トム・ティクヴァ監督の10区、ナタリー・ポートマンが女優志望の女性を演じ、盲目の学生と恋愛をするというお話では、5分で見事に彼らの濃密な日々を伝え、上手に感情移入させてくれました。長編映画のように起承転結が見事に構成されていて印象的。

 リアルな作品もあればファンタジックな作品も。ショートムービーの醍醐味も難しさも感じられます。
 舞台はパリの街だけど、世界の街のどこかで繰り広げられる出会いや別れに想いをはせ、ちょっとセンチメンタルな気持ちにもなりますが、人生そのものの面白さを感じられる愛すべき作品です。


評価:★★★☆☆

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2008/03/02

映画好きにオススメの映画館(1)

今回は映画館の話。
映画好きに嬉しい映画館、飯田橋の「ギンレイホール」をご紹介。

ここは、ロードショーが終わった映画から二作を選んで、二本立てで上映してくれる映画館
「あの映画、観たかったんだけど観逃しちゃった・・・」と思ってる頃に上映してくれたりするのが嬉しいのです。しかもセレクトも結構いい!!

さらに、「ギンレイシネマクラブ」という、1年間観放題のシネパスポートシステムがあって、料金は1人分で10500円というお得さ!
ギンレイホールでは2週間ごとに、二本立ての上映映画が変わりますから、年間50本以上上映されている計算。
全作はさすがに観れないでしょうが、映画好きで観に行く時間が比較的取りやすい方には、絶好のシステム!なのでオススメです。

4月5日から2週間は「めがね」も上映、5月17日から2週間は「4分間のピアニスト」も上映します!
見逃した方は、ぜひ。
けして無くなってほしくない映画館ですね。。。

飯田橋ギンレイホール 公式HP


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