2008/04/17

「アイリス」

2002年公開のイギリス映画。
晩年、アルツハイマーで苦しんだ実在の女性作家、アイリス・マードックと彼女を長年愛し支えた夫、ジョン・ベイリーの物語です。
深い愛に満ちた映画です。

アイリスは、イギリスで「最も素晴らしい女性」と言われ、多くの人の尊敬を集めている存在。
映画では若き日のアイリスをケイト・ウィンスレットが、晩年のアイリスをジュディ・デンチが演じています。(何とも贅沢ですね!)

若き日のアイリスとジョンはオックスフォード大学で出会います。美しく、恋も奔放で、知性と才能溢れたアイリスに、ジョンは一目ぼれ。控えめで目立たない存在のジョンだったが、彼の純粋さに次第に惹かれていったアイリス。その後、二人は結婚。
老年の二人は穏やかに愛情を育んでいましたが、アイリスは次第に物忘れが酷くなり、アルツハイマーになってしまうのです・・・。

晩年のアイリス、ジュディ・デンチの演技は、感動ものです。演技という事を忘れさせ、切なくて胸が痛くなるほど、アルツハイマーを患ったアイリスを体現しています。
ジョンを演じたジム・ブロードベントの演技もまた、心に迫ってくるものがありました。

アルツハイマーという形で、自分自身の正常さを失っていくアイリスの戸惑いや悲しみと、成す術もなくそれを見守り包み込むしかないジョンのやるせない悲しさに、いたたまれなく悲しい気持ちになりながらも、二人に溢れる愛情、慈しみ合う気持ち、絆の強さが、眩しくて優しく染みてきて、何とも言えない気持ちになるのです。
この映画の良さは、その二つの感情を同時に味わうところにあるんじゃないでしょうか。

オススメです。

評価:★★★★☆


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2008/04/13

「シティ・オブ・ゴッド」

これは傑作!!です。

舞台は1960年代から1980年代。ブラジルのリオデジャネイロ近郊にある「神の街」と呼ばれるスラム街。そこは、子供達が平気で銃を持ち、少年ギャング達が街を走り回っている世界。
実話を元に描かれたこの作品、銃を持っている子供達や"殺し”を語る子供達の姿を見ても、最初はそのことが現実とは受け入れがたく、映画の中だけの世界のように感じます。
しかし、こういった状況が紛れも無く現実に起こっているという事実。そのことにまず衝撃を受けます。

それに加えて、この映画は作品として衝撃的に素晴らしい出来映えです。
テンポが早くて、無駄がない。
群像劇でもあり、さらに時間の流れがある、という物語の構造がうまくまとまっている上に、
暴力、ストリートチルドレンの犯罪、抗争といったモチーフの中に、少年達目線の日常や友情もバランスよく描かれています。
そこに、要所要所でやってくる緊迫感。
最後まで怒涛の勢いで映画の中に引き込みます。


この「シティ・オブ・ゴッド」の監督は、「ナイロビの蜂」などのフェルナンド・メイレレス監督。
一部のキャストを除き、ほとんどの主要キャストを現地のスラム街で暮らす素人から採用したそう。
オーディションと演技訓練を重ねて臨んだそうですが、リアル感という点でもそれが功を奏した印象です。
とはいえ、映画の中で映し出されたものは、きっとまだまだ生ぬるいものでしかないでしょう。
現地ではもっと目を背けたくなるような状況だろうということが想像に難くありません。

ラストは、本当に「やられた!!」といった感じ。
非常にライトな幕引きに、その無常さを見せつけられます。

未見の方は、ぜひ!

評価:★★★★☆(4.5)


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2008/04/09

「エターナルサンシャイン」

単なる“切ないラブストーリー”的映画と想像したら、大間違い。いい意味で期待を裏切ってくれることでしょう。
もちろん「切ない」要素はあるものの、よくある恋愛映画の類ではなくて、とっても良く考えられた展開の、非常に“キュート”な作品でした。

主人公ジョエルを演じるのは、ジム・キャリー。「え、この人がジム・キャリー?!」と思うほど、コメディタッチの映画ではしゃいでる彼とはキャラが全く被らず、まるで別人のよう!!

ケイト・ウィンスレットも「演技の幅が広いなあ、、」と最近思うのですが、この映画でもその演技の上手さは健在。
監督はミシェル・ゴンドリー。ビョークやレディオヘッドなどそうそうたる人気ミュージシャンのミュージック・ビデオやCMなどを数々手掛けています。脚本は「マルコヴィッチの穴」なども手がけた人気脚本家のチャーリー・カウフマン。強力な二人がタッグを組んだわけですね。

舞台は冬のN.Y.。喧嘩別れした恋人のクレメンタインが自分の記憶を消したという事実を知ってしまったジョエル。
あまりのショックに、彼は自分も同じように彼女の記憶を消すことを決意。しかし脳の中でクレメンタインとの思い出を巡るうちに、「記憶を消したくない!」と気づくジョエル。しかし、記憶消去の作業中は睡眠状態。彼の意思ではその作業を止めることもできず、脳の記憶の世界で必至にもがくが・・・といったストーリー。
 
現在、過去、ジョエルの脳の中の記憶・・・などのシーンが交錯して、どれが過去でどれが現在?どれがリアルな世界?と、わからなくなるところもありますが、見終えると「なるほど!!」と納得します。

この映画は二度以上観ることをオススメします。時間軸やいろんなことがわかってきて、二度目はまた違った発見や味わいがあるのです。

人為的に「記憶を消す」という非日常のファンタジー、
愛しい思い出や感覚、ちょっとした恋のすれ違い・・・といった、観る人が自分の日常になぞらえてリアルに共感できること、その両方がバランスよく合わさった、いい映画じゃないでしょうか。


評価:★★★★☆

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2008/04/05

「シャンドライの恋」

1998年公開。「ラストエンペラー」の監督として、その名を世界に轟かせたベルナルド・ベルトルッチ監督の監督作品です。
そして主演はタンディ・ニュートン。この映画の後、「ミッション・インポッシブル2」のヒロインに抜擢されたので彼女を知ってる人も多いでしょう。

私は圧倒的に、この「シャンドライの恋」の彼女の方がキュートで魅力的だなあ、、、と思うのですが、皆さんいかがでしょう。
 

 政治活動をしていた夫が逮捕され、アフリカから単身ローマに渡ってきたシャンドライ。シャンドライは孤独なイギリス人ピアニスト・キンスキーの邸宅で家政婦として住み込みで働きながら、大学に通う。

 無口なキンスキーとシャンドライの間には会話は少なかったが、キンスキーはシャンドライに惹かれていく。そして、シャンドライに求婚まで。
 最初は彼のその愛の深さを知らなかったシャンドライも徐々に彼の無償の愛情に心が揺れ動き始める・・・といったストーリー。
 

 印象的なのは、劇中で印象的に描かれていた螺旋階段。そして螺旋階段の下から上を見上げるシャンドライの表情。
 
 アフリカの民族音楽や、クラシックのメロディ、シャンドライの好きなアフリカのポップミュージック、それぞれのシーンで、その感情が音楽に乗って表現されている、その演出も素敵。
 
 
 伝えたくても伝えられない想いを言葉意外で示すキンスキー。それが彼の行動だけでなく、映像であったり、音楽であったりから伝わってくる、だからなのか、この映画からは何だか「香り」がするんです。
「香り」を感じる時の感覚のように映画を味わう感覚。
 
 だからこそ余韻を残すのだと思うのです。
 

 ラストシーンは本当に素晴らしいです。結果は観る人次第で違うでしょう。
 
 とても美しい映画でした。 
 

 余談ですが、ダウンタウンの松本人志さんも、「シネマ坊主」という映画批評本の中で、この「シャンドライの恋」について書いていましたが、評価(特にラストシーン)は高く、10点満点中、9点。


評価:★★★★☆


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