2008/02/26

「パーク アンド ラブホテル」

 先日、ベルリン国際映画祭にて最優秀新人作品賞を受賞した熊坂出(いづる)監督の監督作「パーク アンド ラブホテル」の試写会に招いて頂き観てきました。
 ベルリン映画祭の最優秀新人作品賞は部門問わず優れた長編デビュー作に贈られるもので、日本人としては熊坂監督が初の受賞だそう!
 
 先日、監督やキャストの方々で受賞記念記者会見が行われていましたが、知らせを聞いた瞬間の心境について語った熊坂監督のコメントが印象的でした。
 知らせを聞いて、嬉しくはあったが、我を忘れるほど喜びが爆発したという感じではなかったとのこと。
というのも、
 「もちろん世間の評価も大切ですが、自分の評価が一番大事だと思ってますから。電話で知らせを受けたときも周囲を見渡して“街や人々は何も変わってない。浮かれるんじゃないぞ”と自分に言い聞かせながら、また街の写真を撮りました」とのこと。

 実際映画を観てみると、受賞も納得。長編デビュー作とは思えない、味わい深くて粋な映画でした。
主演は女性シンガーソングライターの草分けとも言われるりりィさん他、同世代から絶大な支持を得ているちはるさん、神農幸さんなどが出演しています。

 主人公は初老の女性、艶子。さびれたラブホテルのオーナー。その彼女が経営するホテルの屋上には、なぜか小さな公園が。そこに子供から老人まで多世代の人達が自由に訪れ、おのおの好きなようにくつろぎ、日が暮れる前に帰っていきます。
 多くを語らない秘密めいた艶子と、そこを訪れた美香、月、マリカ、3人の孤独な女性達。彼女達の静かな心のふれあいが描かれています。

 艶子と3人の女性、それぞれ抱えた孤独のかけらを見つめつつも、次第に彼女達の明日が今日よりほんのりと優しくて温かい日になるように思える。そんな不思議なパワーを感じられる映画なのです。

 また、斬新な脚本も、不思議な空気感を醸し出す独特な人物設定も素晴らしかったと思います。劇中でも心に残る印象的な台詞が度々ありました。

 さらに、艶子を演じたりりィさんの存在感もそうですが、もの悲しい表情を浮かべる横顔が時に言葉よりも印象的で。また、それが観る人に伝わってくる絶妙なカメラワークでした。

熊坂監督の次回作も思わず期待してしまう、素敵な映画でした。
好きです。こういう映画。

(c)PFFパートナーズ
4月26日(土)より ユーロスペース他、順次各地でロードショー
公式HP

評価:★★★★☆

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「美しすぎる母」

試写会に招いていただき、「美しすぎる母」を観てきました。

 この映画はトム・ケイリン監督が、息子による母親殺害という実際に起こったセンセーショナルな事件を元に映画化したもの。主演は「めぐりあう時間たち」や「エデンより彼方に」でもおなじみのジュリアン・ムーア。
 昨年のカンヌ映画祭で上映された際も、その衝撃的な内容で話題をさらったとのこと。

 ジュリアン・ムーア演じるバーバラは貧しい育ちながらも、大富豪であるブルックスと結婚。二人は息子、アントニーを授かり、バーバラは憧れだった上流階級での華やかな生活を送る。様々な国々を旅し、社交界を渡り歩く日々を過ごすが、ある時ブルックスはバーバラも息子アントニーをも捨て去っていく。
傷ついたバーバラもアントニーも、精神のバランスを失い、二人の心の歯車はどんどん狂っていく・・・。そして衝撃の結末へと向かっていく・・・。

 全体を通して、うっとりするほどの美しい映像。ファッションもしかり。
しかし、それよりも鮮烈に記憶に残ったのは、ジュリアン・ムーアの演技の素晴らしさ、そしてその美しさ。
「美しさ」という言葉だけでは表現し足りませんが、バーバラのその女性としてのあり余るほどの魅力、危うさ、儚さも、複雑で説明しがたい心情も、とても見事に表現していたように思います。

 その衝撃的な内容、きっとこれから公開が近づくにつれ、どんどん話題をふりまいていくことでしょう。
 そのストーリーの感想の続きはまた後日!!
  
photo:(c) Lace Curtain, Monfort Producciones and Celluloid Dreams Production

公式HP 
初夏、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー

評価:★★★★☆

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2008/02/24

「窯焚」-KAMATAKI-

 ヒジョーに渋くてカッコイイ俳優・藤竜也さん主演の「窯焚」を観てきました。
しかも舞台挨拶付き!

 この映画はカナダの監督、クロード・ガニオン監督が日本を舞台に日本の伝統文化である陶芸、かつ今では数少なくなった日本古来の陶器を焼く過程「窯焚」を題材にした異色の作品。
モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞、観客賞など史上初の5冠に輝いた映画なのです!

 日系カナダ人青年のケンは父の死によって、人生そのものに意欲を失い、自殺未遂までしてしまった。母親のはからいで叔父である著名な陶芸家・琢磨の元でしばらく過ごす事に。
 信楽の町で琢磨の奔放さや人間としての魅力に触れながら、次第に心を開いていく。そして「窯焚」に挑むケンの心にはそれまでには無い感情が芽生えていく・・・。

 この映画の中で行われる「穴窯」という窯を使っての窯焚という行程は今はその過酷さから随分少なくなってしまったとのこと。日本特有の文化でもあり、古代技術の最高峰とも言われるそうです。
 約10日に渡って、昼夜寝ずに約7分おきに薪をくべ、穴釜を1300度以上の高温に保つ事も要求されます。人工的なうわぐすりを使わずに焼くその手法によって、独特の風合いや美しさを見せるとのこと。
 実際、映画の中で映し出される作品の一つ一つも吸い寄せられるほどに素晴らしく美しいものでした。

 陶芸家・琢磨を演じる藤竜也さんは実は陶芸が趣味で10年以上もやってきたとのこと。また驚くべき事に実はガニオン監督はそれを知らずに藤竜也さんにこの役をオファーをしたそうなんです。(びっくり!かつなんだか運命的!)

 クロード・ガニオン監督は約1年に渡り、舞台になった信楽に住み、世界的陶芸家・神崎紫峰さんの穴窯で、実際に約10日に渡る窯焚の作業に参加。その窯焚の行程はもちろん、その前の窯入れから、窯開きなど一連の作業、また信楽の町など様々な事を勉強したようです。
並々ならぬその情熱がスクリーンを通して伝わりました。
また映画で見られる美しい陶器のほとんどは神崎さんの作品とのこと。

 「穴窯」という普段見る事のできない窯で陶器を焼くその行程を、物語を通して見られたことも非常に貴重な経験で、とても興味深いものでした。

 周囲のあるがままを受け入れる琢磨の自然体な生き方、窯焚の炎、ケンの心の中を駆ける様々な変化を観ていく中で、浄化されるような穏やかな気持ちと炎に象徴される激しい熱、相反するような二つの気持ちが自分自身にもやって来る・・・そんな何とも言えない独特の魅力に溢れた映画でした。

 映画の中で琢磨が「杯を空にしなさい」と語るシーンは、いつまでも心に残るシーンでした。


公式HP  新宿バルト9で2/23より公開。全国で順次ロードショー。


評価:★★★★☆

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「潜水服は蝶の夢を見る」

 また一つ、素晴らしい映画に出会いました。
「バスキア」や「夜になるまえに」を手がけたジュリアン・シュナーベル監督の監督作、「潜水服は蝶の夢を見る」です。

 「潜水服は蝶の夢を見る」
 このタイトルを初めて見た時、その何とも不思議なタイトルに興味が湧きました。
 気になりませんか?このタイトル。その意とすることはどんなことか? 
それを知りたい衝動にかられました。
 映画を観終えてみると、主人公の状況・心境がすごく良く表現されている言葉だとしみじみ感激したのでした。
 
 この映画は実在した人物がモデル。彼が自ら記した奇跡のようなお話を元に作られました。
 フランスのELLE誌編集長をしていたジャン=ドミニク・ボビーは、43歳という若さで脳梗塞で倒れ、第一線で活躍していた日々が一変、唯一左眼の瞼しか動かない身体に。
 彼がしばらくの昏睡状態から目を覚ましても自分の言葉が周りに通じない。それだけでなく、体も全く動かないという耐え難い現実をつきつけられます。

 彼が彼の外界とコミュニケーションするために言語聴覚士が考え出した素晴らしい方法はアルファベットを一字ずつ読み上げ、それを彼がまばたきで合図するというもの。
 そして恐ろしく気が遠くなるほどの行程を経て彼は一冊の自伝本を書くのです。根気強く彼のまばたきの合図を書き取った女性クロードの協力を得て。

 映画の序盤、ジャン=ドミニク・ボビーがいかに悲しみ深く、いかにもどかしいかをとても巧みに観る人に感じさせます。カメラは主人公の「眼」の代わりになり、そこから見える人々や光景を映し出し、観客である私達を疑似体験的な感覚にさせてくれるのです。  
 
 彼の発した言葉で、とても眩しく、目の前がさーっと開けたような光をくれたこと、それは、
 「記憶と想像力が無限である」ということ。「それによってどこまでも旅が出来る」ということ。

 映画を評する言葉として「希望を与えてくれる」という言葉は使い古されているかもしれませんが、
この映画は、そしてジャン=ドミニク・ボビーの生き様は、
人間そのものがどれだけの希望を秘めたものなのかを、これでもかと見せつけてくれました。光を、希望を、くれました。
 自分にとってもこの映画との出会いはとても意義のある数時間であり、多くの人にとっても意義のある出会いになると確信できました。

 また、最後に知らされる運命的な事実は鳥肌が立つほど感動的!
 まだ観ていない人はぜひ!

2008年2月9日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開
photo: ©Pathe Renn Production-France 3


評価:★★★★☆


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公開中! 注目映画

今公開中の映画、気になる映画、観たい映画が目白押しなのです!

気になる公開中映画をいくつか紹介。

「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」
映画のポスターなどでも目にする写真、ジョン・レノンが暗殺される数時間前に撮影れた、伝説的な写真の他、数々のスターの衝撃的な写真を撮影してきた女流写真家、アニー・リーボヴィッツのドキュメンタリー。
彼女の妹が監督を務めたそう! なぜ様々なスターが彼女を信頼して、さらけ出すのか。
同じ女性としても彼女の人生、、、非常に気になります!
写真:(C)2007 by Annie Leibovitz
 公式HP

「団塊ボーイズ」
このネーミングからしても気になる感じですが、人生に煮詰まり気味の中年男4人組がハーレーダビッドソンにまたがって、アメリカ横断3200キロの旅に出るわけです!
子供みたいにはしゃぐ団塊ボーイズたちのロードムービー・・・きっと痛快に違いない!と思うわけです。ジョン・トラボルタやマーティン・ロー レンスなどなどが出演。全米で記録的に大ヒットしたらしいですよ。
絶対観たら元気になりそうな気がするのです。

写真:(C)TOUCHSTONE PICTURES.
 公式HP

早く観に行かねば~!


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2008/02/17

「ラブ・アクチュアリー」

 2003年に公開した「ラブ・アクチュアリー」は、「ノッティングヒルの恋人」や「ブリジットジョーンズの日記」の脚本を手がけたリチャード・カーティス監督が初監督を務めた作品。
 ほど良いユーモア、心温まるストーリー展開や人物設定に「なるほど」といった感じで、納得です。

 この映画の冒頭は、 ヒースロー空港で家族や恋人、友人・・・大事な人を出迎え、久しぶりの再会に歓喜し合う、(おそらく実際の)人達の映像で始まります。
このシーンが非常にいい! こんな冒頭から泣く人は少ないかもしれませんが、私は涙してしまいました。 個人的にはこの映像で掴まれてしまった訳で・・・素晴らしい!と思います。

 9つのストーリー、19人の登場人物それぞれのシチュエーション、それぞれのラブストーリーの群像劇。そして登場人物同士がちょっぴりリンクしていたり。その絡ませ方もなかなか巧みです。
 キャストも豪華! ヒュー・グラント、エマ・トンプソン、キーラ・ナイトレイ、リーアム・ニーソン、コリン・ファース、ローワン・アトキンスン、ビリー・ボブ・ソーントンなどなど。

 物語の主人公はその状況もさまざま。秘書に恋をしてしまうイギリスの首相、初恋に悩む子供を励ます父、会社の同僚に長年片想いをしている女性、親友の花嫁に片想いしている青年、言葉の通じないポルトガル人女性に恋をした小説家、問題発言で世間を賑わす老いぼれロック歌手・・・などなど。

 花嫁役のキーラ・ナイトレイも美しいし、英国の首相なのに一人ノリノリでダンスしてしまうヒュー・グラントの姿も面白い。数年の片想いが成就しそうなひとときにウキウキを抑えられないOL・サラのキュートな姿もとっても微笑ましいのです。  
 私のお気に入りは親友の花嫁に片想いをしているが伝えられず苦悩していた青年の告白シーン。ユーモアある告白の仕方も、彼女の負担にならないようにという彼の精一杯の気遣いや切なさが一層際立って感じられて、思わず涙・・です。

 恋愛中のそわそわやトキメキ、切なさといったエッセンスを十分に味わいながら観ているうちに、それぞれの物語は爽快なクライマックス、切ないクライマックス、希望に満ちたクライマックスなどなど次々と迎えていき、そして映画自体のクライマックスを迎えます。それらのストーリーとシーンの組み合わせ方が本当に絶妙!! 
 
 この映画の味わいとクリスマスのロンドンという設定もぴったりのステキな映画です。


評価:★★★★☆

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2008/02/14

「デカローグ」

 監督はもう既に96年に亡くなられていますが、「トリコロール」三部作や「ふたりのベロニカ」の監督でも知られるポーランドの巨匠、クシシュトフ・キェシロフスキ監督の作品。彼を尊敬する名匠監督も多いと言われています。
 デカローグは約1時間のお話が10話あるオムニバス。元はテレビシリーズだったんですが、各国で劇場公開され、カンヌの審査員特別賞やヨーロッパ映画祭のグランプリなども受賞した作品です。

 「時計じかけのオレンジ」などでも有名なスタンリー・キューブリック監督が「デカローグ」をこう評しています。

「この20年で1本だけ好きな映画を選ぶとすれば、間違いなく『デカローグ』である。」
 キューブリック監督がそこまで言っていると聞くと、映画ファンの方は気になりませんか???

 
十戒をモチーフにした、10のエピソード。全てのお話に「ある○○○に関する物語」というタイトルがついています。
全てのタイトルは以下。

第1話:ある運命に関する物語
第2話:ある選択に関する物語
第3話:あるクリスマス・イブに関する物語
第4話:ある父と娘に関する物語
第5話:ある殺人に関する物語
第6話:ある愛に関する物語
第7話:ある告白に関する物語
第8話:ある過去に関する物語
第9話:ある孤独に関する物語
第10話:ある希望に関する物語

 まだ全てのお話を観ていないうちにコラムを書くのもどうかと思ったけれど、好きな映画の中でもある種の「特別感」を感じるこの映画、ぜひ知って欲しいので紹介しました。
 
 ふとした時間の流れや会話の先に何が待っているのかという絶妙な緊迫感と素晴らしい心理描写と演出。さすがです。
非常に深みのある作品ばかり。理屈抜きに引き込まれます。


 いくつか観たうちで印象的だったのは第4話「ある父と娘に関する物語」
非常に仲よく暮らす父と娘。亡くなった母親が残した1通の手紙をきっかけに、穏やかな日常を過ごしていた2人の間に大きな感情のうねりが生じます。

 今回は序章といった感じでこの辺りまで。
 また後日、コラムの続きを・・・。


最後にキェシロフスキ監督が残した言葉で、興味を引く印象的な言葉を紹介。

身を切るような孤独を知っている者だけが、人生の美しさを真に享受することができる


評価:★★★★☆


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2008/02/12

「ステラ」

 1990年に公開したアメリカ映画で、大女優ベット・ミドラーが主演の映画です。
 母の娘への愛情に溢れている映画で、観た方の多くが「号泣」した映画じゃないでしょうか。私もそのうちの一人です。

 バーテンダーとして働くステラは医大生スティーブンと出会う。スティーブンとの育ちの違いを感じつつ、2人は付き合うようになる。幸せな時間が過ぎていったが、ある日ステラが妊娠したことをきっかけに、2人の関係は終わりを告げる。スティーブンはプロポーズをするものの、同情されても仕方ないとそれを拒否し、女手一人で育てていく決心をするのだ。
娘2人との生活は時にけんかもするも、誰にも引き離せないような強い強い絆があったが・・・。

 直球な演出ではありますが、母親の明るく気丈な姿の中に、娘を何が何でも幸せにするという想いがひしひしと伝わってきて、胸が熱くなります。
 終盤、ステラが身を切るほどに辛かっただろう決断をするところは、涙無しでは観られません。
 ラストのステラの表情が、忘れられず脳裏に残ります。切なすぎます・・・。

 観終えた後、自分の母親の優しさや愛情に想いを馳せ、改めて感謝の気持ちで満たされる・・・そんな映画です。


評価:★★★☆☆

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2008/02/10

「アース」

 今まさに大ヒットで公開中、すごく楽しみにしていた「アース」をようやく見てきました。
 なんて素晴らしい映画でしょう!!
 こんな映画が完成したこと自体、奇跡と言えるんじゃないでしょうか。
 「地球」というとてつもない奇跡の塊を、こんなにもまざまざと見せてもらえたことに、もうただただ感謝するばかり、制作にたずさわった方々に敬意の念でいっぱいになりました。
 生きているうちに絶対に目にすることもできない自然や生き物達の現実、その光景の連続なのですから。

 大ヒットした海洋ドキュメンタリーの「ディープ・ブルー」と超人気TV番組「プラネットアース」のスタッフが結集。制作年数5年、撮影日数も4500日、撮影地も世界の200箇所以上・・・
 映画を観ていても、気が遠くなるほどのその撮影や制作の壮絶さ、その過程にはスタッフの様々な困難があっただろうと思いを馳せずにはいられません。

 そこには地球の紛れもない真実があって、ただただ圧倒され、感動と驚きの連続です!
 ホッキョクグマの愛らしい親子の目覚めに始まり、300万頭もののトナカイの群れやトナカイの子供を狙い追いかける狼、ゾウの群れの長く過酷な行進、ライオンとの危機迫る戦い、信じられない光景、ザトウクジラの親子の貴重な映像・・・。
 野生の動物の習性に驚き、食うか食われるかの動物達の過酷な現実を目の当たりにしては驚き・・・。
それからホッキョクグマの子供も、オシドリの雛達の初飛行の姿も、かわいくてたまりませんでした!

 また、ザトウクジラ親子を撮影したカメラマンのコメントによると、ザトウクジラの母親になんと2mという近さまで近づき撮影できたとのこと。そして、そばへ寄ってもリラックスをしていて、これは信頼関係を築けた証だと。
この撮影も自分の身の危険にさらされながらの撮影だったのですから。

 「アース」は「地球」の今をこれほどまでも伝えてくれ、私達がこらから地球を守るためにすべきことを問いかけます。
 これはもう、「観てほしい」というより「観るべき!」と声を大にして言いたい壮大な壮大な映画です!

(C) BBC WORLDWIDE 2007

公式HP


評価:★★★★★

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2008/02/05

「パリ、テキサス」

 大好きな映画の中の一つ、「パリ、テキサス」。
 ヴィム・ヴェンダース監督が世に送り出した名作の一つとしても有名です。
 カンヌ映画祭でもパルムドールを受賞。公開から20年以上たった今でも、色あせません。
 様々な要素が入りながら、それらが完璧に組み立てられ、素晴らしく完成度の高いドラマじゃないでしょうか。

 主人公のトラヴィスは4年前に家族の前から姿を消し、荒野を放浪している。ほとんど言葉を発しない、廃人のような状態でいるところを、弟が迎えに来た。
 最初はコミュニケーションもままならない状態だったのだが、弟の元で一緒に暮らし始めるうちに、徐々に人間らしさが戻ってくる。 
 再会時、「親」という認識を持てていなかった幼い息子との距離も次第に縮まっていき、2人は失踪した妻を探しに行く旅に出ることにするが・・・。

 登場人物それぞれが持つ様々な『愛』の形を感じる事ができます。
 兄弟の愛。親子の愛。時間が積み重ねた愛。男と女の愛。自己愛・・・。 
 愛の形も強さもそれぞれで、それを観ている私達は時に温められ、時には痛々しく思い、時にはどうしようもなく切なてたまらなくなるのです。

 何度も観たいシーンはたくさんありますが、好きなシーンをいくつか紹介。
 昔の映像を見て涙を流すトラヴィス、そしてそれを見て何かを感じとる息子の姿。
 通りを挟んで、トラヴィスと息子が同じ様に歩くシーンのとても微笑ましいこと、
そして、
 後半から終盤にかけての一連のやりとり・・・(状況を書きたいですが、観ていない方の為にあえて我慢!)は涙が止まりません。それぞれの関係性、過去と現在とあふれ出す感情、それらが一気に繋がっていくかのように、鳥肌が立つほどに素晴らしいのです。

 観ていない方は、ぜひぜひ、観てください。
 最高の一作です。


評価:★★★★★

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「母べえ」

大ヒットしてる「母べえ」。縁あって試写で一足先に観ることができました。
 どうやら涙腺のツボを掴まれたようで、涙がなかなか止まってくれない作品でした。

 監督は山田洋次監督、主演は吉永小百合さん。言うまでもなく、とても贅沢な組み合わせ。
さらに浅野忠信さん、笑福亭 鶴瓶さんなどが出演、と他のキャストも豪華です。
原作は黒澤明監督のスクリプターとして長年活躍されてきた野上照代さんの自叙伝「父へのレクイエム」。

 舞台は昭和15年の東京。物語の中心になる野上家は「父べえ」「母べえ」「初べえ」「照べえ」と皆愛称で呼び合い、家族の団欒はとても微笑ましくて、そしてとても温かな空気が流れていた。
 平和を願い、戦争反対を唱えていた作家の父べえは、ある日治安維持法で検挙されてしまった。残された母べえは父べえの元教え子の山ちゃんや義理の妹の久子、伯父の仙吉などに励まされ、助けられながら子供達を守り、ひたすら父べえの帰りを待つのだが・・・といったお話。


 坂東三津五郎さん演じる父べえが検挙される直前の、娘達に向けられた優しさ溢れる表情がとても忘れがたく、胸に響きました。
 そして父べえの帰りを待つ母べえと娘達の姿は、辛く寂しい状況にもかかわらず、下を向くことなく、明るく互いに支えあっていました。
 映画の全編を通して散りばめられたユーモア、そして真っ直ぐで温かく疑う必要もない良心や優しさが詰まっていて、それらエピソードの一つ一つに、笑い、泣き、登場人物と同様に切なさでいっぱいになったりするんです。


 「山ちゃん」の存在が、登場人物達の間でも「なくてはならない存在」だったように、観る側にも「なくてはならない存在」であるかのように感じました。
 
 山田監督が戦争への怒りを込めてこうして伝えてくれた力強いメッセージ、戦争をリアルに経験していない私達世代にも、しっかりと届きました。


評価:★★★.5

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2008/02/03

「SWEET SIXTEEN」

 心にぐさっと刺さった映画の中の一つ。
 私の好きなケン・ローチ監督の監督作で、2002年に公開。脚本はケン・ローチ監督の映画で何度もコンビを組んでいるポール・ラヴァティ。

 主人公のリアムは、恋人の罪を被って刑務所で服役している母親の出所を心待ちにしている15歳の少年。 リアムの望みは母親と姉達と家族団らんで暮らすこと。ただそれだけ。 丘の上の海を見下ろせる家を見つけ、その家を買うために母親の恋人が持っていたドラッグを盗んで売りさばき、次第にドラッグの売人として出世していくのだが・・・。

 ただただ純粋に母や姉達とのささやかな日常、ささやかな幸せを願うリアム。
そして、その未来を固く信じている姿、純粋すぎるリアムを見せつけられるほどに、リアムの前にやってくるあまりにやり切れない状況が、痛くて痛くて心が締め付けられます。

救いなんて何一つないんじゃないかと途方にくれてしまう中で、本当にごく僅かながらも、希望があるんじゃないかと思うラストシーン、、忘れられないワンシーンです。

ぜひ、観てほしい映画の一つです。


評価:★★★★☆


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2008/02/02

「単騎、千里を走る」

中国映画界の大御所、チャン・イーモウ監督の監督映画で、自分でもびっくりするほどに、「泣き過ぎ!」とツッコミが入りそうなほど、泣いてしまった映画。

 ストーリーは、長年絶縁に近い状態であった父と息子。その息子が癌で余命わずかだと知った父親は、息子が長年研究していたものだと息子の妻にも らったビデオテープを見た事をきっかけに、中国の仮面劇の演目「単騎、千里を走る」を息子の代わりに撮影するべく、中国に旅立つ。 
 言葉の通じない異国の地で、そう簡単には事が運ばない。そうして中国の人々と触れ合っていく中で、過去、息子への想い、様々な想いが駆け巡る、という様なお話。


 チャン・イーモウ監督は以前監督をした「あの子を探して」という映画も、出演者のほとん
どを中国の田舎の村の素人の子供達でキャスティングしていました。
 今回の映画でも中国側の出演者ほとんどは地元の素人だそうです。(もちろん随分厳選したようですが。)  
 特筆すべきは、後半のキーになる、少年の演技、表情! なんともいいです。
 

 人のごくシンプルな感情、素朴な温かさ、優しさ・・・

 わだかまりがあろうと、長年会っていなかろうと、消えてなくなる事がない絆、2人の『父』が見せた父が子を思う強い強い気持ち、

それらがズンと響いて、涙が止まりませんでした。
   

 2005年、日中友好イベントの一環として上映された時に見たのですが、その時、チャン・イーモウ監督が会場に来られていて、スピーチを聞くことができました。
 
 ユーモアの交え方もとっても上手で、温かい人柄だろうと想像させるステキなスピーチでしたよ。
(ちなみに、、チャン監督はとにかく日本のラーメンが大好きで前回3日間の日本滞在中に6回もラーメン食べたとか。それって朝食以外全部ラーメン?!?・・・) 

 チャン監督にとって、高倉健さんは「偶像」のような存在で、一緒に仕事ができる事が本当に夢のようで、とっても楽しみにしていたそうです。
 
 中国での撮影終了の日(高倉健さんとの別れの日)、撮影に直接関わった俳優さんやスタッフだけではなく、雑用や食事の担当のスタッフま でみんなが、涙を流していたそうです。映画のロケ現場でこんなことはそうはないそうです。それだけ、この映画を作っていく中で友情を育む事できたんだろう、と監督は嬉しく思っ たとのこと。
  

 とてもわかりやすくて、「直球」な映画だと思います。ベタ、という人もいるかもしれません。でも、出演する素朴な中国の人たちと、随所に散りばめられたユーモアに本当に気持ちが温められてしまうのです。


評価:★★★★☆

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