2010/01/29

『未来を写した子どもたち』

「未来を写した子どもたち」を観た。2005年、第77回のアカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した作品で、ロス・カウフマン監督の監督作。

このようなドキュメンタリーがこのように映画化できたことのみならず、アカデミー賞といった大きな賞を受賞したことで、少しでも多くの国で上映されるきっかけになったかと思うと、とても嬉しく思う。
日本での上映に約5年もかかってしまったのは残念だけれど・・・。


この映画は売春窟に暮らす子供たちとそこを訪れた写真家のザナ・ブリスキの活動を収めたドキュメンタリー。
インド・カルカッタの売春窟に生まれついた子供たち。一定の年になればほとんどの女の子は売春婦になる運命にある。
この街を訪れ、子供たちのほとんどが夢や希望を持つことも許されないような悲惨な境遇であることを知ったザナは子供たちを救い出したいという想いから、写真教室を開き、子供たちに写真を教える。さらに、その子供たちが学校でちゃんとした教育が受けられるよう、奔走するのだ。


映画の中で、自分たちの運命を知る子供たちが発する言葉は胸に痛いものだった。
まだまだ純真無垢であろう年頃の子供たちが、自分たちが置かれている家庭環境やこの街で育つことの悲しい運命を、彼ら・彼女らなりに冷静に捉えていることの衝撃。
彼らはそんな境遇でもその生活の中にわずかな希望を見出し、逞しく生きている。

この映画に登場する子供たちの中でも類稀な才能を見出された少年・アヴィジット。彼の作品はその構図や視点も写真を教わったばかりの子供とは思えないほど、独特で素晴らしい。
そして彼はアムステルダムで開かれるこども写真展にインド代表として招待されることとなった。
一度は写真から離れかけた彼が、アムステルダムの街をいきいきとした表情で歩く姿が実に印象的だった。

これからDVDでこの作品を観る人は、ぜひ特典映像にあるインタビューを観て欲しい。来日時の監督とアヴィジットのインタビューだ。
アヴィジットは、この映画ののちに映画の作り手になることを目標に、ザナの活動で集まった資金でアメリカの高校に行くことができた。そしてニューヨークの大学にも進学することとなる。
ザナの取り組みや写真との出会いが彼の運命を変えたように、自分が作った映画をきっかけに誰かの人生が変わるかもしれない。それを願って目を輝かせる彼の表情は、この映画にさらに光を与えてくれた気がする。
その一方で、彼から語られた話には、どうにもできない現実と悲しみもあった。

ザナ・ブリスキは子供支援基金「KIDS WITH CAMERAS」を設立している。
ザナ達の取り組みは、映画の中に登場した、ごく一部の子供たちだけに影響を与えたのではなく、その後もその活動の影響が大きく広がっている。

こうした意義のある映画こそ、ぜひ多くの人に観て欲しい。

(C)Red Light Films, Inc.2004