
この映画は非常に独特な作り方で、実際に起こった事件を、裁判などのドキュメンタリー部分と実際に事件に係わった当事者達の再現部分とを境界なく、構成した珍しい作品。
どこからがフィクション(といっても元は実話がですが・・・)で、どこからがノンフィクションか、観ているうちはちょっと混乱するものの、それがまた興味をそそるのですね。
主人公・サブジアンは詐欺罪で逮捕された青年。その青年は、映画への愛や様々な感情にかられ、自分を憧れの映画監督、モフセン・マフマルバフだと偽り、ある家族をだましてしまうのです。
最初は彼が思わずとっさについてしまった嘘ながら、その嘘をつき通し、家族の家で撮影をする、お金を騙し取るという話にまで発展してしまうのです・・。
そして、実際の裁判にカメラが入り、サブジアンがなぜ彼が嘘をつきとおすに至ったか、その訳があかされていくのです。
観ている私達、おそらく大方の人が彼を非難する気持ちは薄れていくでしょう。彼が告白する心に秘めていた声を聞き、痛みを知り、単なる憧れだけから来たものではない、切実なる想いが故の行動を理解するのです。
そして、彼の気持ちのどこかしらに、誰しも少なからず共感を覚える部分があるのだと思います。
終盤にはサブジアンが尊敬してやまないマフマルバフ監督が彼の出所時に出迎え、感動的対面を果たします。
その後、彼らは一緒にバイクに乗り、あるところへ向かうのです。
ここはまたノンフィクションの部分でもあり、最後の最後にサブジアンが見せる表情は、眩しい光となって映画を締めくくってくれました。
「照らし出す」ということはこういうことなのかもしれませんね。
出会えてよかったと思う素敵な映画です。
そして、映画館で観たかったな~と思う映画。笑
キアロスタミ監督自身も自身の監督作の中で一番好きな作品といい、キアロスタミ監督のファンの中でもこの作品が一番好きという人が意外と少なくないのも、納得!でした。
評価:★★★★☆(4.5)
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