2008/03/21

「明日へのチケット」

2006年後半に公開したこの「明日へのチケット」、この映画は、「ぜひ!」とオススメしたい映画の一つ。

 世界的にファンも多く、監督陣からも尊敬の念を集めている名匠3人の監督が共同監督として製作しているのだから、ひじょーーーに贅沢!な映画です。
 3人の監督全員がカンヌ映画祭でパルムドール(グランプリ)を取っているのですよ。
 その3人の監督はというと、
「木靴の樹」のエルマンノ・オルミ監督
「ケス」「SWEET SIXTEEN」「麦の穂を揺らす風」などの私の好きなケン・ローチ監督
「友だちのうちはどこ?」「桜桃の味」などのアッバス・キアロスタミ監督

 この映画の企画の始まりは、キアロスタミ監督の提案によるものだそう。そして、キアロスタミ監督自身が組んでみたい監督として挙げた2人がエルマンノ・オルミ監督とケン・ローチ監督。そしてこの2人の監督に話を持ちかけたら、直ちに「もちろん!」との快諾の返事が来たそうです。

 映画の物語はヨーロッパを横断する同じ列車に乗っている人達という設定のもと、3つの話をそれぞれの監督が製作。そして、その3つの話が完全に独立したオムニバス映画という訳ではなく、登場人物が物語の中でほんの少し重なり合う・・そんな1本の映画としてのつながりがある構成なのです。
 3つのお話全てが、それぞれに違う形の味わい深い余韻を残す、素敵な作品です。

エルマンノ・オルミ監督のお話は、出張先で出会った女性秘書に想いを馳せる初老の大学教授の話。
アッバス・キアロスタミ監督のお話は、兵役義務の一つとして、将軍の未亡人(これがまたびっくりするほどわがまま放題で放漫!)の面倒を見ている若い青年の話。
ケン・ローチ監督のお話はスコットランドのサッカーチーム、(中村俊輔選手の活躍でもお馴染みの)セルティックのローマでの試合を観るために興奮しながら列車に乗る3人の少年達と難民家族の話。

オルミ監督のお話は淡々と流れるように続くのですが、大学教授の心の内の切なさや記憶と空想の重なり合い、心情の揺れといったものと場の状況の描写、それらの演出が何ともマッチしていて、ただただ「さすがだなあ」と惚れ惚れしてしまう一作。

キアロスタミ監督のお話はシニカルながらも、後からじわじわとその良さが心に染みてくるような一作。厳しさと共に、希望を残す後味。

ケン・ローチ監督のお話はわかりやすいストーリー展開の中に、すごく清清しい爽快感を残しました。ケン・ローチ監督の「SWEET SIXTEEN」でも主役を務めたマーティン・コムストンやその友達役を演じたウィリアム・ルアンなどが出演!
「人を信じる」というメッセージが観ている私達に希望を感じさせてくれたのかもしれません。
ラストがまた良かった!

それぞれの監督の人間への温かい眼差しを感じて、心満たされる、いい映画です。

公式HP(予告編も見れます)

評価:★★★★☆(4.5)

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