2008/02/24

「潜水服は蝶の夢を見る」

 また一つ、素晴らしい映画に出会いました。
「バスキア」や「夜になるまえに」を手がけたジュリアン・シュナーベル監督の監督作、「潜水服は蝶の夢を見る」です。

 「潜水服は蝶の夢を見る」
 このタイトルを初めて見た時、その何とも不思議なタイトルに興味が湧きました。
 気になりませんか?このタイトル。その意とすることはどんなことか? 
それを知りたい衝動にかられました。
 映画を観終えてみると、主人公の状況・心境がすごく良く表現されている言葉だとしみじみ感激したのでした。
 
 この映画は実在した人物がモデル。彼が自ら記した奇跡のようなお話を元に作られました。
 フランスのELLE誌編集長をしていたジャン=ドミニク・ボビーは、43歳という若さで脳梗塞で倒れ、第一線で活躍していた日々が一変、唯一左眼の瞼しか動かない身体に。
 彼がしばらくの昏睡状態から目を覚ましても自分の言葉が周りに通じない。それだけでなく、体も全く動かないという耐え難い現実をつきつけられます。

 彼が彼の外界とコミュニケーションするために言語聴覚士が考え出した素晴らしい方法はアルファベットを一字ずつ読み上げ、それを彼がまばたきで合図するというもの。
 そして恐ろしく気が遠くなるほどの行程を経て彼は一冊の自伝本を書くのです。根気強く彼のまばたきの合図を書き取った女性クロードの協力を得て。

 映画の序盤、ジャン=ドミニク・ボビーがいかに悲しみ深く、いかにもどかしいかをとても巧みに観る人に感じさせます。カメラは主人公の「眼」の代わりになり、そこから見える人々や光景を映し出し、観客である私達を疑似体験的な感覚にさせてくれるのです。  
 
 彼の発した言葉で、とても眩しく、目の前がさーっと開けたような光をくれたこと、それは、
 「記憶と想像力が無限である」ということ。「それによってどこまでも旅が出来る」ということ。

 映画を評する言葉として「希望を与えてくれる」という言葉は使い古されているかもしれませんが、
この映画は、そしてジャン=ドミニク・ボビーの生き様は、
人間そのものがどれだけの希望を秘めたものなのかを、これでもかと見せつけてくれました。光を、希望を、くれました。
 自分にとってもこの映画との出会いはとても意義のある数時間であり、多くの人にとっても意義のある出会いになると確信できました。

 また、最後に知らされる運命的な事実は鳥肌が立つほど感動的!
 まだ観ていない人はぜひ!

2008年2月9日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開
photo: ©Pathe Renn Production-France 3


評価:★★★★☆


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