2008/01/27

「マイ ネーム イズ ジョー」

私の好きな監督、巨匠・イギリスのケン・ローチ監督の監督作品でもあります。  

 スコットランドのとある町で暮らす主人公のジョーはアルコール中毒からやっとの思いで断酒でき、失業中ながらもアマチュアのサッカーチームの監督を務め、自分の「これから」を前向きに生きていこうと歩き始めていた。 
 
 そんな時に、甥の家庭問題の相談員のセーラという女性に出会い、二人の間にも恋心が芽生え、少しずつながらジョーの生活は立ち直り始めていた。  
 
 そんな中、甥が巻き込まれてしまったある問題。それを救おうとする心がジョー自身を苦悩させる事へ発展してしまい・・ というようなお話。
 

 ケン・ローチ監督の作品はいつも、夢のようなお話でもなければ、人々に憧れられるような華やかな話でもありません。すぐ隣の家に住むような親近感を感じさせる人達、つつましくも健気に頑張っている人々を照らし出してくれるのです。

 この映画も例にもれず、「ジョー」というとっても温かい愛すべき主人公を描く事を通して、実際に同じ様に苦しみつつも頑張っている人達を応援してくれている気がしてなりません。
 
 そこに心が温められてしまうのです。
 

 「人」に対する愛情がこれほど感じられる監督は稀有だと思うのです。

そこは昔の作品からずっと一環して感じられます。
 

 アル中時代の自己嫌悪にさいなまされる思い出をジョーがセーラに語るシーン。
 
 大事な人を悲しませ、しかし大事な人を救おうとするジョーのどうしようもない心の葛藤。

 そんな苦悩やもがき、切なさを見せられると、心からジョーを応援したくなるのです。
 
 そしてラストにあるほんの僅かなひとすじの希望。
 
 そこがまた、監督の「人」への眼差しの近さ、優しさを感じずにはいられず、心に留まってしまうのかもしれません。
   

 「痛み」を感じつつも「優しさ」を感じられる映画。
 
 そして人が人を支えたい気持ちを信じたくなる映画。
 
 そんな風に思うのです。


評価:★★★★☆

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