
「ひかりのまち」は個人的に好きな監督の一人、マイケル・ウィンターボトム監督の1999年の作品。映画館で観終わった後の余韻が素晴らしかったのを今でも覚えています。
舞台がロンドンなのも、とても懐かしくて愛おしくて「大好き」になってる理由の一つかもしれません。 手持ちカメラで照明もエキストラも使わずに撮った作品。だからこそ、よりリアルなロンドンが少しでも感じてもらえる映画になってると思います。
主人公ナディアは、ロンドンの中心にあるSOHOのカフェでウェイトレスをし、伝言ダイヤルにメッセージを残して、出会いを求め、いろんな男性と会ったりしている。 そして、夫と別れて息子を育てている姉、出産間近の妹、ロンドンから離れて奔放に過ごしている弟、冷めた空気の流れている両親達。それぞれにとっての日常の数日間に起こった出来事のお話。
様々なシーンに穏やかに優しく見守る眼差しが感じられて、とてもいい。あえて語ることのない機微な心情を照らし出してくれるこういう映画は私はとても好きです。
好きなシーンはたくさんありますが、その中でも2つを紹介。
主人公ナディアがやるせなさと孤独感の中で帰りのバスに乗り、周りのにぎやかさの中で一人静かな涙を流すシーン。彼女の孤独感が伝わってきて、涙を流さずにはいられない。
そしてもう一つは、終盤に何でもないマンションの部屋の灯りを徐々に引いていってたくさんの部屋の灯りを写しているシーン。
そのシーンが、
「映画で照らし出した人達の日常みたいに、この灯りの奥にいるそれぞれの人々にも小さなドラマが起こっていて、同じ様に素敵な映画になりえる」
というメッセージのような気がして、とても好きなのです。
原題は「WONDERLAND」というのだけど、このタイトルは映画の中の話のとても希望溢れるシーンのキーにもなっている言葉。サブタイトルに使っても良かったんじゃないかなと思う。
「ひかりのまち」という邦題はとてもよく映画をあらわしていて素敵だけど、ね。
映画の温かさも美しさも、なくてはならないマイケル・ナイマンの切なくも希望を感じさせる音楽に絶妙に合っていて、何度も観たくなる、とてもいい映画!
ラストもいい!
評価:★★★★★

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