2008/01/27

「ミツバチのささやき」

 この「ミツバチのささやき」、2006年に日比谷シャンテで行われた「BOW30映画祭」での上映映画ラインナップに見事に入っていまして・・幸運にも映画館で見ることができました。  

 監督は
「10ミニッツオールダー(人生のメビウス)」のお話でも書いた、ビクトル・エリセ監督。スペイン出身の監督です。  

 ここ30年位は、約10年に1度のペースでしか、監督作としての映画を発表していません。
 意図的にそうしたのではなく、その間にたくさんの努力をした後で、残念ながら断念せざるを得なかった作品もあったとの事。  
 それだけ公開できた作品達には、きっと思い入れも並々ならぬものがあるでしょう。
私は、前述の映画、「10ミニッツオールダー〈人生のメビウス)」(そうそうたる監督達が集った短編オムニバス映画)で、初めてビクトル・エリセ監督の監督作品に出会いました。      

 そしてこの「ミツバチのささやき」という映画は、 静かで、優しくて懐かしい時間が流れている映画でした。
 
 映画で映し出されるその空間に自分の身を置きたくなる衝動、そんな感覚が何度もやってきました。
 

 小さな頃に素朴に疑問に感じた事、子供ながらのささやかな秘密事、何かを発見した時のドキドキした感覚。
 
 みんながそれぞれに持っている、そんな内に秘めた宝物のような事が集まった、なんとも貴重な時間を見せてもらえたような、そんな特別な映画。
 
 ひとつひとつの光景、映像、少ないながらに語られる言葉。どれも、エリセ監督には天才的な感覚の鋭さがあるんだろう・・と思わせられます。
 

 この映画で感じた良さを言葉にするのがとても難しいのですが、
見終えた後の思いを例えるならば、静かで美しい自然を見て、自然は何も語らないけれど純粋に無条件で感動してしまう、そんな感覚に似ている気がします。  
 
 主人公アナの純粋な気持ちや眼差しを、誠実に誠実に、丁寧に、手のひらで壊れないように優しく包んだまま目の前で見せてくれたような、そんな貴重で温かな映画のように感じました。
   

 そして、伝えずにいられないのは、主人公アナ役のアナ・トレントちゃんのかわいらしさ!!
 これまで私が映画で観た子供達の中で、「ベスト1」と断言します。  
 初めての演技だったようですが、演技とは思えないほど、自然です。
   

 もし観るならば、忙しいさなかではなく、夕暮れ時、なんとなく穏やかな気持ちになりたい時にお薦めの映画です。 


評価:★★★★☆

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